債務整理を考えているものの、弁護士費用を用意できるか不安で動き出せない。そんなときに検討したいのが、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助です。
ただし、法テラスの制度は「費用が無料になる」ものではなく、いったん法テラスが立て替えて、あとから毎月返していく仕組みです。ここを誤解したまま申し込むと、あとで返済の連絡が来て驚くことになります。
この記事では、法テラスで債務整理を進めるときの手順を、問い合わせの段階から援助開始決定、そして償還の開始までを順に整理します。記事執筆時点の公式サイトの内容をもとにしていますが、基準や運用は変わることがありますので、最終確認は法テラスの窓口で行ってください。

法テラスの民事法律扶助でできること
債務整理に関係するのは、大きく次の2つです。
1. 無料法律相談/資力基準を満たす方は、同一の問題について3回まで無料で相談できます。相談時間は1回30分です。
2. 弁護士・司法書士費用等の立替/着手金や実費を法テラスが立て替え、依頼者は毎月分割で返していきます。利息はつきません。
公式の説明は法テラス公式サイトで確認できます。電話は0570-078374(法テラス・サポートダイヤル)です。
手順1:問い合わせと相談の予約
最初の入口は電話またはウェブです。サポートダイヤルに電話すると、内容を聞き取ったうえで、無料法律相談の対象になりそうかどうかを確認してもらえます。地域の法テラス地方事務所に直接連絡する方法もあります。
この時点で、おおよその借入総額、債権者の数、毎月の収入、家族構成を答えられるようにしておくと、話が早く進みます。正確な数字でなくてかまいません。
伝える数字をあらかじめノートに書き出しておくと、電話でも落ち着いて答えられます。
手順2:資力要件の確認
無料法律相談も立替制度も、収入と資産が一定の基準以下であることが前提になります。判断は原則として、申込者本人と配偶者の収入・資産を合算して行われます(離婚事件などでは本人のみで判断されることがあります)。
収入の基準(手取り月収額)
基準額は、同居家族の人数と居住地域で変わります。東京都特別区や大阪市など生活保護一級地では、次の金額が目安になります。
| 人数 | 東京都特別区等 | その他の地域 |
|---|---|---|
| 1人 | 200,200円以下 | 182,000円以下 |
| 2人 | 276,100円以下 | 251,000円以下 |
| 3人 | 299,200円以下 | 272,000円以下 |
| 4人 | 328,900円以下 | 299,000円以下 |
5人以上の場合は、1人増えるごとに東京等で33,000円、その他の地域で30,000円が加算されます。家賃や住宅ローンを負担している場合は、一定額まで基準額に上乗せできます(1人世帯で41,000円、東京等では53,000円が上限といったかたちで定められています)。
資産の基準
現金・預貯金のほか、不動産や有価証券も対象です。目安は1人180万円以下、2人250万円以下、3人270万円以下、4人300万円以下とされています。
上記は記事執筆時点で公式サイトに掲載されていた金額です。基準は改定されることがあり、個別の事情による調整も行われます。最新の数字と自分が該当するかどうかは、必ず法テラスに直接ご確認ください。

手順3:無料法律相談を受ける
予約の日に、法テラスの事務所または法テラスと契約している弁護士・司法書士の事務所で相談します。1回30分と決まっているので、聞きたいことを紙にまとめて持参すると効率的です。
・借入先ごとの契約書、明細、督促状
・給与明細(直近のもの)や源泉徴収票
・住民票(世帯全員の記載があるもの)
・家賃や住宅ローンの金額が分かる資料
・預貯金通帳、保険証券などの資産が分かるもの
・本人確認書類、印鑑
相談の場では、任意整理・個人再生・自己破産のどれが候補になりそうかという方向性が示されます。ここで方針が確定するわけではなく、正式な依頼のあとに取引履歴を調べたうえで最終判断になるのが一般的です。
持参する書類は、1冊のファイルにまとめておくと相談や申込みの際に取り出しやすくなります。
手順4:立替の申込みと審査
立替制度を使う場合は、申込書と必要書類を提出して審査を受けます。審査では次の3点が見られます。
1. 収入と資産が資力基準以下であること
2. 勝訴の見込みがないとはいえないこと(債務整理では、手続を進める合理性があること)
3. 民事法律扶助の趣旨に適すること
審査の結果、援助開始決定が出ると、弁護士・司法書士との委任契約に進みます。書類がそろっていれば、申込みから決定まで2週間程度で進むこともありますが、内容によってはもう少しかかります。
手順5:受任通知の発送と手続の開始
委任契約を結ぶと、担当の弁護士・司法書士が債権者へ受任通知を送ります。この通知が届いた時点で、貸金業者等からの直接の取り立ては制限されます。生活の落ち着きを取り戻せるのは、この段階からです。
その後、各債権者から取引履歴を取り寄せ、実際の債務額を確定させます。この作業には数週間から数か月かかることがあります。
手順6:立替金の償還が始まります
援助開始決定のあと、事件が進んでいる間から毎月の返済が始まります。金額は月々5,000円または10,000円といった単位で設定されるのが一般的で、利息はつきません。
収入が減るなどして支払いが難しくなった場合は、猶予の申請ができます。また、生活保護を受給している間は償還が猶予され、事件がすべて終了した時点でも受給が続いている場合は、償還の免除を申請できます。
法テラスの案内では、個人再生(民事再生)の裁判所への予納金は、生活保護の受給の有無にかかわらず立替の対象外とされています。自己破産の予納金についても、生活保護を受給している方を除いて立替の対象になりません。手続の種類によっては、この分を自分で用意する必要があります。総額の見通しは相談時に確認してください。

法テラスを利用するときに知っておきたい特徴
制度の性質上、一般の法律事務所に直接依頼する場合とは進み方が異なる部分があります。良い悪いではなく、性質の違いとして把握しておくと、期待とのズレが起きにくくなります。
費用の面で助けになる部分
最大の利点は、まとまった着手金を用意できなくても手続を始められることです。債務整理は、動き出しが遅れるほど延滞が積み重なり、選べる手続の幅が狭まっていきます。費用の準備を待たずに受任通知を出せるのは、生活を立て直すうえで大きな意味があります。
加えて、立替金には利息がつきません。分割で返す期間が長引いても総額が膨らまないため、返済計画を立てやすい仕組みになっています。
毎月の償還を生活費の中で無理なく続けるには、家計簿で収支を把握しておくと見通しが立てやすくなります。
時間の面で余裕を見ておきたい部分
一方で、申込みから援助開始決定までには審査があるため、依頼を決めたその日に手続が始まるわけではありません。書類の不足があるとさらに時間がかかります。住民票や給与明細など、指示された書類は早めにそろえることが、結果的に手続を早めます。
担当者の選び方に制約が出る場合
法テラスと契約している弁護士・司法書士の中から担当が決まるため、必ずしも希望どおりの相手になるとは限りません。相性が気になる場合は、事前にその点の取り扱いを窓口に確認しておいてください。
審査で利用できないと判断されるのはどんな場合か
民事法律扶助は誰でも使えるわけではありません。実務上、次のような理由で利用できないことがあります。
・収入や資産が資力基準を超えている
・配偶者と合算した結果、基準を上回った
・手続を進める合理性が認められない
・すでに同じ問題で援助を受けている
・事業に関する債務が中心で、個人の民事法律扶助の枠組みになじまない
基準を少し超えている程度であれば、家賃や医療費の負担を考慮してもらえる場合があります。自己判断で諦める前に、実際の数字を持って窓口に相談してみることをおすすめします。
また、資力について事実と異なる申告をすると、援助の取消しなど不利益な扱いを受けることがあります。収入や資産は正確に伝えてください。
すでに依頼している弁護士がいる場合
法テラスと契約している弁護士・司法書士であれば、その事務所を通じて民事法律扶助を申し込める場合があります。「持ち込み申込み」と呼ばれる方法です。すでに相談先が決まっている方は、その事務所が法テラスと契約しているかどうかを尋ねてみてください。
よくある質問
Q. 法テラスに相談すれば必ず立替を受けられますか
いいえ。資力基準を超える場合や、審査の要件を満たさない場合は利用できません。利用できるかどうかは審査によって決まりますので、事前に確定的な回答を得ることはできません。
Q. 担当する弁護士や司法書士は選べますか
希望を伝えることはできますが、地域や事件の内容によっては法テラスから紹介される形になります。相性が合わないと感じた場合の対応についても、窓口で確認しておくと安心です。
Q. 無料相談の3回はどう数えるのですか
同一の問題について3回までとされています。借金の問題と離婚の問題のように内容が異なる場合の取り扱いは、窓口で確認してください。
Q. 収入がゼロでも利用できますか
収入がないこと自体は資力基準の面では不利になりません。ただし、償還の見通しについては個別に判断されます。生活保護を受給している場合の猶予・免除の扱いは前述のとおりです。
Q. 家族に知られずに手続できますか
配偶者の収入・資産を合算して判断するため、書類の準備で協力が必要になる場面があります。事情がある場合は、その旨を相談時に伝えてください。
Q. 相談の前に借入先を全部思い出せません
信用情報機関に開示請求をすると、自分名義の契約の一覧を確認できます。CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターの3つがあり、登録されている情報が機関ごとに異なるため、必要に応じて複数に請求します。開示結果を相談に持参すると、債権者の数が確定して話が具体的になります。
Q. 受任通知が届いたあとも督促が来ることはありますか
貸金業者からの直接請求は制限されますが、事務処理の行き違いで連絡が来ることはあります。その場合は自分で対応せず、担当の弁護士・司法書士に伝えてください。依頼後に本人が債権者と直接やり取りすると、方針が崩れることがあります。
Q. 手続にはどのくらいの期間がかかりますか
任意整理であれば数か月、自己破産や個人再生では半年から1年以上かかることもあります。期間は債権者の数や裁判所の運用によって変わりますので、一律には言えません。
まとめ
法テラスで債務整理を進める流れは、問い合わせ→資力の確認→無料法律相談→立替の申込みと審査→援助開始決定と受任→償還の開始、という順序になります。
大事なのは、立替制度は返済が前提であり、無料の給付ではないという点です。そのうえで、無利息で分割できること、生活保護受給中は猶予・免除の道があることは、費用を理由に相談をためらっている方にとって大きな支えになります。
まずは法テラス・サポートダイヤル 0570-078374 に問い合わせてみてください。取り立ての方法に不安がある場合や契約トラブルが絡む場合は、消費者ホットライン188も利用できます。日本弁護士連合会や日本司法書士会連合会のサイトから各地の相談窓口を確認できますので、そちらも選択肢に入れて、自分に合う入口を選んでいただければと思います。手続の効果や期間、費用は事案によって異なります。



