「借金の返済が厳しいけど、住宅ローンが残っている家だけは手放したくない」。マイホームを持つ方にとって、債務整理と住宅の関係は最も気になるポイントでしょう。
任意整理では対象にする借入先を選べるため、住宅ローンを除外すれば自宅を失うことなく他の借金を整理できます。住宅ローンの返済はこれまで通り続けることになりますが、カードローンやキャッシングの利息負担が軽くなる分、全体の家計バランスは改善されます。
この記事では、任意整理が住宅ローンに与える影響と、マイホームを守りながら借金問題を解決する方法を詳しく解説していきます。

任意整理が住宅ローンに与える直接的な影響
任意整理と住宅ローンの関係を整理すると、以下の3つのポイントが重要です。
住宅ローンを対象から外せば自宅は守れる
任意整理は整理する借入先を自由に選択できるのが最大の特徴です。住宅ローンを対象から外してカードローンやクレジットカードのリボ払いだけを整理すれば、住宅ローンの契約には一切影響がありません。これまで通りの条件で返済を続けられます。
住宅ローン自体を任意整理するのは現実的ではない
住宅ローンは元々金利が低く(変動金利で0.3〜0.5%程度、固定金利で1〜2%程度)、将来利息のカットという任意整理のメリットがほとんど活かせません。また、住宅ローンには抵当権が設定されているため、返済条件を変更すると金融機関が抵当権を実行して自宅を競売にかける可能性があります。
住宅ローンの返済自体が厳しい場合は別の手続きを検討
住宅ローンの返済そのものが厳しい場合は、任意整理ではなく個人再生の「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」を利用する方法があります。この制度を使えば、住宅ローンはそのまま返済を続けつつ、その他の借金を大幅に圧縮できます。
住宅ローン以外の借金で困っている場合→任意整理で住宅ローンを除外。住宅ローンの返済自体も厳しい場合→個人再生の住宅ローン特則を検討。まずは弁護士に状況を相談しましょう。
任意整理後の住宅ローンへの間接的な影響
住宅ローンを対象から外しても、任意整理には間接的な影響があります。事前に把握しておきましょう。
住宅ローンの借り換えが困難になる
任意整理を行うと信用情報に事故情報が登録されるため、住宅ローンの借り換え審査に通ることが難しくなります。現在の住宅ローンの金利が高い場合でも、完済後5年が経過して信用情報が回復するまでは借り換えは困難です。
住宅ローンの条件変更(リスケジュール)に影響する可能性
住宅ローンの返済条件の見直し(返済期間の延長や一時的な返済額の減額)を金融機関に相談する場合、任意整理をしていることがマイナス材料になる可能性があります。ただし、条件変更の可否は金融機関の判断次第です。
団体信用生命保険(団信)への影響はない
住宅ローンに付帯する団体信用生命保険は、任意整理による影響を受けません。万が一のことがあった場合に住宅ローンが完済される保障はそのまま維持されます。

住宅ローンがある場合の任意整理の進め方
住宅ローンを守りながら任意整理を進める際の実践的な手順を解説します。
まずは全体の借入状況を整理する
住宅ローンの残高・月々の返済額に加え、カードローンやクレジットカードの借入先・残高・月々の返済額をすべてリストアップします。全体像が見えると、どの借入を任意整理すればよいかの判断がしやすくなります。
住宅ローンの返済を滞納していないか確認する
住宅ローンの滞納が3ヶ月以上続くと、期限の利益が喪失し、一括返済を求められる可能性があります。一括返済ができなければ、最終的に競売にかけられてしまいます。住宅ローンだけは何があっても滞納しないようにしましょう。
弁護士・司法書士に住宅ローンの状況を正確に伝える
相談時には住宅ローンの残高、月々の返済額、金利タイプ(固定・変動)、残りの返済期間などを正確に伝えましょう。これらの情報を基に、任意整理後も住宅ローンの返済を継続できるかどうかのシミュレーションを行ってくれます。
任意整理と個人再生の住宅ローン特則を比較する
マイホームを守りながら借金を整理する方法として、任意整理と個人再生の住宅ローン特則を比較してみましょう。
任意整理の場合
対象債権者を選べるため、住宅ローンを除外できます。将来利息のカットが主な効果で、元金の大幅な減額は望めません。裁判所を通さないため手続きが比較的簡易です。費用は1社あたり3〜5万円程度が相場です。
個人再生(住宅ローン特則あり)の場合
住宅ローンを返済し続けながら、その他の借金を5分の1〜10分の1程度まで圧縮できます。元金そのものを大幅に減額できるため、借入総額が大きい場合に特に有効です。裁判所を通す手続きで、費用は弁護士費用を含めて50〜60万円程度が相場です。
どちらを選ぶべきか
住宅ローン以外の借金が200万円以下であれば任意整理で十分対応できるケースが多いです。一方、借入総額が300万円を超えるような場合は、個人再生の住宅ローン特則を利用した方が返済負担の軽減効果が大きくなります。
個人再生の住宅ローン特則を利用するには、自分が所有し居住している住宅であること、住宅ローン以外の抵当権が設定されていないことなど、いくつかの要件を満たす必要があります。事前に弁護士に確認しましょう。

住宅ローンの返済が厳しい場合の対処法
住宅ローンの返済自体が苦しい場合に検討すべき選択肢を紹介します。
金融機関への返済条件変更の相談(リスケジュール)
住宅ローンの返済が厳しくなった場合、まずは借入先の金融機関に相談しましょう。返済期間の延長や、一時的に元金据え置きで利息のみの返済にするなどの条件変更(リスケジュール)に応じてくれる場合があります。信用情報への影響も債務整理より小さくなります。
住宅ローンの借り換え(任意整理前に検討)
任意整理を行う前であれば、金利の低い住宅ローンへの借り換えで月々の返済額を減らせる可能性があります。任意整理後は借り換えが困難になるため、先に検討しておくべきです。
任意売却という選択肢
どうしても住宅ローンの返済が難しい場合は、任意売却も一つの選択肢です。競売よりも高い価格で売却できるケースが多く、売却後の残債についても分割払いの交渉ができます。ただし、マイホームを手放すことになるため、最終手段として考えましょう。
将来住宅ローンを組む予定がある場合の注意点
現在住宅ローンはないけれど、将来的にマイホームの購入を考えている方への影響も解説します。
信用情報の回復まで住宅ローンは組めない
任意整理の事故情報が信用情報機関に残っている間(完済後約5年間)は、住宅ローンの審査に通ることは困難です。マイホーム購入を計画している場合は、信用情報の回復時期を見据えたスケジュールを立てましょう。
信用情報回復後のローン審査のポイント
事故情報が消えた後は、安定した収入と一定の頭金があれば住宅ローンの審査に通る可能性は十分にあります。任意整理をした金融機関やそのグループ会社は社内データに記録が残っている可能性があるため、別の金融機関を選ぶのが無難です。
任意整理と住宅ローンに関するQ&A
Q. 任意整理をしても住宅ローンはそのまま返済し続けられますか?
はい、住宅ローンを任意整理の対象から外せば、これまで通りの条件で返済を続けられます。住宅ローンの契約内容には一切影響がありません。
Q. 住宅ローンの連帯保証人に影響はありますか?
住宅ローンを任意整理の対象から外していれば、連帯保証人に影響はありません。住宅ローンの返済を滞りなく続けている限り、保証人に請求が行くことはありません。
Q. 配偶者が任意整理をした場合、自分名義の住宅ローンに影響しますか?
信用情報は個人単位で管理されるため、配偶者が任意整理をしても自分名義の住宅ローンに直接的な影響はありません。ただし、配偶者が連帯保証人や連帯債務者になっている場合は注意が必要です。
Q. 住宅ローンを任意整理の対象にしたらどうなりますか?
住宅ローンには抵当権が設定されているため、任意整理の対象にすると金融機関が抵当権を実行し、最終的に自宅が競売にかけられるリスクがあります。住宅ローンを任意整理の対象にすることは避けるべきです。
Q. 任意整理後に住宅ローンの繰り上げ返済はできますか?
住宅ローンを対象から外していれば、繰り上げ返済は問題なく行えます。むしろ、任意整理で他の借金の利息負担が減った分を住宅ローンの繰り上げ返済に回すことで、総支払額を減らすことが可能です。

まとめ
任意整理は対象にする借入先を選べるため、住宅ローンを除外してマイホームを守りながら借金を整理できます。住宅ローンの借り換えが一定期間困難になるなどの間接的な影響はありますが、自宅を失うリスクは回避できます。
住宅ローンの返済自体が厳しい場合は、個人再生の住宅ローン特則や、金融機関への返済条件変更の相談(リスケジュール)も視野に入れてみてください。まずは弁護士や司法書士に無料相談して、自分の状況に合った最善の方法を見つけましょう。
参考:個人再生の住宅資金特別条項とは?|弁護士法人・響、法テラス(日本司法支援センター)、住宅ローンが払えないとどうなる?|全国任意売却協会

