借金の返済で行き詰まっているのに、それを解決するための費用が払えない。これは債務整理を考える方の多くがぶつかる壁です。「お金がないから相談できない」と感じて、そのまま何年も動けずにいる方も少なくありません。
ただ、費用を一括で用意できないことを理由に、債務整理をあきらめる必要はありません。分割払い、受任後の積立て、法テラスの立替制度など、支払い方を工夫する手段が複数用意されています。
この記事では、そもそも債務整理にどれくらいの費用がかかるのか、費用が用意できないときにどんな方法があるのか、法テラスの立替制度の条件はどうなっているのかを整理して解説します。

債務整理にかかる費用の内訳
費用は手続きによって大きく変わります。まずは何にお金がかかるのかを整理しておきましょう。
専門家に支払う費用
- 相談料:初回無料としている事務所も多くあります
- 着手金:依頼した時点で支払う費用。結果にかかわらず発生します
- 解決報酬金:和解や手続きの成立時に支払う費用
- 減額報酬金:減額できた金額に応じて支払う費用
- 過払金報酬金:過払金を回収できた場合に支払う費用
- 実費:通信費、交通費、書類の取得費用など
裁判所に納める費用
個人再生や自己破産では、収入印紙代、郵便料、予納金が必要です。予納金の額は裁判所や事件の種類によって異なり、管財事件になると数十万円が必要になることもあります。裁判所ごとに運用が違うため、依頼する専門家に確認してください。
費用の目安
実際の金額は事務所によって大きく異なるため、幅で捉えてください。任意整理は債権者1社ごとの費用設定が一般的で、個人再生・自己破産は手続き全体での費用設定になります。個人再生は住宅ローン特則を使う場合に加算されることがあり、自己破産は同時廃止か管財事件かで総額が変わります。
正確な金額は、必ず契約前に書面で提示してもらいましょう。ホームページの「◯円〜」という表示だけで判断するのは避けてください。
弁護士については、日本弁護士連合会の「債務整理事件処理の規律を定める規程」で報酬に上限が定められています。非事業者の任意整理では、解決報酬金が1社あたり2万円以下(商工ローンは5万円以下)、減額報酬金が減額分の10%以下、過払金報酬金が訴訟によらない場合20%以下・訴訟による場合25%以下です(いずれも税別)。
費用が払えないときの5つの方法
1. 受任後の積立てで支払う
もっとも一般的な方法です。弁護士・司法書士に依頼すると受任通知が送られ、対象にした債権者への返済がいったん止まります。これまで返済に充てていたお金を、そのまま費用の積立てに回すという流れです。
たとえば毎月4万円を返済に充てていた方であれば、返済が止まった数か月分で費用の相当部分をまかなえる計算になります。多くの事務所がこの前提で費用の支払い計画を組みます。
積み立てるお金は、生活費と混ざらないように袋分けなどで分けて管理しておくと安心です。
2. 着手金の分割払いに対応してもらう
着手金を数回に分けて支払える事務所は多くあります。何回まで分割できるか、いつから手続きに着手してもらえるかは事務所によって異なるため、相談時に確認しましょう。
なお、着手金を後払いにできる事務所もあります。手元にまったく現金がない場合は、その旨を正直に伝えてください。伝えずに契約すると、途中で支払いが止まり手続きが進まなくなります。
3. 法テラスの立替制度を利用する
収入・資産が一定の基準以下であれば、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助を利用できます。詳しくは次の章で説明します。
4. 過払金がある場合はそこから充当する
取引の内容によっては過払金が発生していることがあります。その場合、回収した過払金から費用を差し引く形にできるため、持ち出しが少なくて済むことがあります。ただし過払金があるかどうかは取引履歴を調べないとわかりません。
5. 特定調停を検討する
簡易裁判所に自分で申し立てる特定調停は、申立て自体の費用が低額です。ただし書類の準備や期日への出席をすべて自分で行う必要があり、平日に時間を確保できることが前提になります。

法テラスの民事法律扶助を詳しく知る
法テラスは国が設立した法的トラブル解決のための機関です。経済的に余裕がない方向けに、無料の法律相談と、弁護士・司法書士費用の立替を行っています。
利用できる3つの条件
- 収入と資産が、定められた資力基準以下であること
- 勝訴の見込みがないとはいえないこと
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
収入の基準(手取り月収額の目安)
申込者と配偶者の手取り月収額(賞与を含む手取り年収の12分の1)の合計で判断します。記事執筆時点の目安は次のとおりです。
| 人数 | 一般の地域 | 東京・大阪などの大都市 |
|---|---|---|
| 1人 | 182,000円以下 | 200,200円以下 |
| 2人 | 251,000円以下 | 276,100円以下 |
| 3人 | 272,000円以下 | 299,200円以下 |
| 4人 | 299,000円以下 | 328,900円以下 |
5人以上の家族の場合は、同居家族1名増えるごとに一定額が加算されます。また家賃または住宅ローンを負担している場合は、その分を上限の範囲で加算できます。
資産の基準
現金・預貯金などの合計額で判断します。目安は1人世帯で180万円以下、2人世帯で250万円以下、3人世帯で270万円以下、4人世帯で300万円以下です。将来の医療費など、出費の予定があるものは考慮される場合があります。
立替金の返済(償還)
法テラスが立て替えた費用は、原則として分割で返済します。月々5,000円から1万円程度という無理のない金額に設定されるのが一般的です。援助が終了した翌々月あたりから返済が始まります。
生活保護を受給している場合
生活保護を受給している方については、立替金の償還が援助終結まで猶予される場合があります。さらに、援助が終結した時点でも生活保護を受給している場合には、償還免除の申請ができる場合があります。
申請には償還免除申請書と、直近に発行された生活保護受給証明書などが必要です。手続きの詳細や必要書類は変更されることがあるため、最新の内容は法テラスの公式サイトまたはサポートダイヤル(0570-078374)で確認してください。
資力基準の金額や運用は見直されることがあります。この記事の数字は記事執筆時点の目安です。実際に利用できるかどうかは、必ず法テラスの公式情報または最寄りの窓口で確認してください。
法テラスを使うときの留意点
法テラスと契約している専門家に依頼する必要がある
立替制度を利用するには、法テラスと契約している弁護士・司法書士に依頼することになります。すでに相談したい事務所が決まっている場合は、法テラスの利用に対応しているかを確認しましょう。
審査に時間がかかる
申込みから援助開始の決定までには一定の時間がかかります。差押えが迫っているなど緊急性が高い場合は、その事情を相談時に伝えてください。
裁判所に納める実費は別途必要な場合がある
立替の対象は主に弁護士・司法書士の費用と一部の実費です。予納金など、別途負担が必要になるものもあります。総額でいくら必要になるかを事前に確認しておきましょう。

やってはいけない対処法
費用を借金で用意しようとする
債務整理の費用を新たな借入でまかなうのは避けてください。返済の見通しが立たない状態でさらに借りると、状況が悪化します。また、直前の借入は手続きの中で問題になることもあります。
「必ず減額できる」とうたう業者に飛びつく
結果を保証する表現を掲げる相談先には注意が必要です。減額の可否や幅は借入状況によって異なり、確約できるものではありません。
資格のない業者に依頼する
弁護士・司法書士の資格がない者が報酬を得る目的で法律事務を扱うことは、弁護士法・司法書士法で禁止されています。不審に感じたら、弁護士会・司法書士会や消費者ホットライン(188)へ相談してください。
何もせずに放置する
放置している間も遅延損害金は増え続けます。滞納が続けば一括請求や給与の差押えに進むこともあります。動かないことが一番費用のかかる選択になりかねません。
費用の前に、生活を支える公的制度も確認する
債務整理の費用が用意できないほど家計が苦しい場合、借金の問題と並行して、生活そのものを支える制度を検討する価値があります。窓口は市区町村の福祉担当課や社会福祉協議会です。
生活困窮者自立支援制度
自立相談支援機関で、家計の立て直しや就労に関する相談ができます。家計改善支援事業では、収支の把握や滞納している公共料金の整理など、具体的な家計の見直しを一緒に進めてもらえます。
毎月の収入と支出を家計簿に書き出しておくと、相談の場でも状況を伝えやすくなります。
住居確保給付金
離職や収入減により住まいを失うおそれがある場合に、一定期間の家賃相当額が支給される制度です。要件や支給期間は定められているため、詳細は自治体の窓口で確認してください。
生活福祉資金貸付制度
社会福祉協議会が実施している低利または無利子の貸付制度です。ただし新たな借入であることに変わりはないため、債務整理と組み合わせるべきかどうかは専門家と相談してから判断してください。
生活保護
収入や資産が最低生活費を下回る場合に検討される制度です。「借金があると生活保護は申請できない」と思われがちですが、これは誤りです。借金の有無は生活保護の要件ではないため、債務がある状態でも申請できます。ただし保護費から借金を返済することは想定されていないため、実務上は債務整理とあわせて進める形になります。
生活保護を受給しながら債務整理を行うことも可能で、その場合は法テラスの立替金について償還が猶予され、終結時に免除申請ができる場合があります。
借金の相談と生活支援の相談は、別々の窓口になることが多いです。法テラスや自立相談支援機関に、両方を抱えている状況であることを最初に伝えると、必要な窓口へつないでもらえます。
よくある質問
Q. 相談だけなら無料ですか
A. 初回相談を無料としている事務所は多くあります。法テラスでも、資力基準を満たせば同一の問題について3回まで無料の法律相談を受けられます。
Q. 収入がまったくない場合でも依頼できますか
A. 収入がない場合でも自己破産などの手続きは検討できます。法テラスの利用や、事務所の分割払いを組み合わせることになります。まずは正直に状況を伝えてください。
Q. 途中で費用を払えなくなったらどうなりますか
A. 支払いが滞ると手続きが止まり、辞任されることもあります。支払いが難しくなりそうな段階で、必ず事務所へ相談してください。金額や時期を調整してもらえる場合があります。
Q. 家族に立て替えてもらってもいいですか
A. 問題ありません。ただし家族に事情を説明する必要が出てくるため、知られたくない場合は他の方法を検討することになります。
Q. 費用が安い事務所を選べばいいですか
A. 着手金が安くても、報酬を合わせた総額では高くなることがあります。比べるべきは総額と、対応できる手続きの範囲です。
まとめ
債務整理の費用が用意できない場合でも、受任通知によって返済が止まった分を積み立てる、着手金を分割にする、法テラスの立替制度を使うといった方法があります。生活保護を受給している方については、償還の猶予や免除申請という仕組みも用意されています。
費用や手続きの結果は事案によって異なり、一律の答えはありません。だからこそ、費用を理由に相談自体をやめてしまうのはもったいない選択です。
まずは法テラスや弁護士会・司法書士会の相談窓口で、いまの状況を伝えてみてください。費用の目安と支払い方法を含めて、具体的な見通しを示してもらえます。
・法テラス・サポートダイヤル 0570-078374(平日9時〜21時/土曜9時〜17時)
・消費者ホットライン 188(局番なし)
・お住まいの地域の弁護士会・司法書士会の相談窓口
・お住まいの市区町村の社会福祉協議会・自立相談支援機関
お金の問題で気持ちが追いつめられているときは、法律の窓口とあわせて次の窓口も利用できます。
・よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・通話無料)
・こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
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参考:日本弁護士連合会 – 債務整理の弁護士報酬のルールについて
参考:裁判所 – 個人再生



