過払い金について調べていると、たくさんの法律事務所や司法書士事務所の広告に行き当たります。どこも実績を強調していて、結局どう選べばいいのか分からなくなる。そんな声はよく聞かれます。
先にお断りしておきます。この記事では、特定の事務所をおすすめしたり、順位を付けたりすることはしません。事案の内容によって適した専門家は変わりますし、外から見える情報だけで優劣を判断できるものでもないからです。
代わりにこの記事では、公的な相談窓口の使い方と、事務所を選ぶときに自分の目で確認できるポイントを整理します。判断の基準は、日本弁護士連合会が定めている規程など、公開されているルールに求めます。個別の判断は弁護士・認定司法書士・法テラスへの相談を通じて行ってください。

まずは公的な窓口から当たるという選択
いきなり民間の事務所を比較し始めると、広告の量に判断が引っ張られます。中立的な立場の窓口から入ると、基準を作りやすくなります。
法テラス(日本司法支援センター)
法テラスは国が設立した法人で、法的トラブルの総合案内を担っています。情報提供は資力を問わず利用でき、収入と資産が資力基準以下であれば、弁護士・司法書士による無料法律相談(民事法律扶助)を受けられます。同一の問題について3回まで利用できる運用です。
電話窓口は法テラス・サポートダイヤル 0570-078374、受付は平日9時〜21時、土曜9時〜17時です(記事執筆時点)。
| 人数 | 手取月収額の基準(一般の地域) | 手取月収額の基準(東京・大阪などの大都市) | 資産の基準 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 18万2,000円以下 | 20万200円以下 | 180万円以下 |
| 2人 | 25万1,000円以下 | 27万6,100円以下 | 250万円以下 |
| 3人 | 27万2,000円以下 | 29万9,200円以下 | 270万円以下 |
| 4人 | 29万9,000円以下 | 32万8,900円以下 | 300万円以下 |
お住まいが東京・大阪などの大都市の場合は、基準額が高く設定されています。一般の地域の数字だけを見て「自分は対象外だ」と判断しないでください。5人以上の家族の場合は、同居家族が1名増えるごとに基準額に一定額が加算され、家賃や住宅ローンの負担がある場合もその分が考慮されます。
基準額や運用は改定されることがあります。この記事の数字は記事執筆時点の目安です。実際に利用できるかどうかは、必ず法テラスの公式サイトまたはサポートダイヤルで確認してください。
弁護士会・司法書士会の相談センター
各地の弁護士会が運営する法律相談センターや、司法書士会の相談窓口では、借金や過払い金に関する相談を受け付けています。無料枠の有無や実施日は地域によって異なるため、お住まいの地域の会に問い合わせてください。
自治体の無料法律相談
市区町村でも弁護士による無料法律相談を定期開催しているところが多くあります。1回30分程度の予約制が一般的です。
消費生活センター(消費者ホットライン188)
「188」に電話すると身近な消費生活センター等につながります。過払い金の手続きそのものを代理する窓口ではありませんが、不審な勧誘への対応や、適切な窓口の案内を受けられます。

相談先を探す前に押さえておきたい前提
どこに相談するかを考える前に、そもそも自分が対象になるのかを知っておくと、話が早く進みます。
対象になるのは限られた取引
過払い金が発生するのは、グレーゾーン金利が撤廃される前に、その金利帯で借入をしていた場合です。2010年6月18日の改正貸金業法の完全施行により出資法の上限金利が年29.2%から年20%に引き下げられ、グレーゾーン金利は撤廃されました。それ以降に始まった借入では過払い金は発生しません。
最終取引日から10年で時効
過払い金の返還請求権は、最終取引日から10年が経過すると原則として請求できなくなります。心当たりがある方は、確認だけでも早めに動くほうが選択肢が残ります。
戻る金額は事前には分からない
過払い金が発生しているか、いくらになるかは、取引履歴を確認して引き直し計算をしてみないと分かりません。相談前に金額を断言する説明は、正確な根拠にもとづくものではありません。また、請求先の業者が経営破綻していた場合、回収できる割合は大きく下がります。大手業者が会社更生手続に入った例では、返還が元金の数パーセント程度にとどまりました。
取り寄せた取引履歴や手元に残っている契約書などは、ひとつにまとめて保管しておくと、相談の際に確認しやすくなります。
弁護士と認定司法書士、どちらに頼むか
資格による担当範囲の違いは、選ぶ前に知っておくべき前提です。
弁護士は取り扱える債権額に上限がなく、交渉から訴訟まで一貫して対応できます。認定司法書士は、1社あたりの債権額が140万円以下の範囲に代理権が限られます。最高裁判所は平成28年6月27日の判決で、債務整理の対象となる個別の債権の価額が140万円を超える場合、認定司法書士はその債権に関する裁判外の和解を代理できないと判断しました。
過払い金の額は計算してみるまで分かりません。そのため、相談の時点で「140万円を超えた場合はどう対応するか」を確認しておくと、後から慌てずに済みます。

事務所を選ぶときに確認したいポイント
ここからが本題です。以下は広告の印象ではなく、自分で確かめられる項目です。
1. 担当する専門家と直接話せるか
日本弁護士連合会の「債務整理事件処理の規律を定める規程」では、受任する弁護士が自ら依頼者と直接面談して事情を聴くことが原則とされています。問い合わせから契約まで事務スタッフだけが対応し、担当者と一度も話さないまま進むようであれば、その場で確認してください。
2. 不利益になる事項を説明してくれるか
同規程では、事件処理の方針とあわせて、依頼者にとって不利益になる事項を説明することが求められています。返済中の借入について引き直し計算をした結果、借金が残れば債務整理として信用情報に記録されること、業者が破綻していれば回収額が限られること。こうした話を先に伝えてくれるかどうかは、大きな判断材料です。
3. 過払い金請求だけを切り出そうとしていないか
同規程には、過払い金返還請求のみを受任することを原則として禁止するという定めがあります。他に返済中の借入がある場合、全体の整理方針とあわせて検討するのが本来の形です。過払い金の部分だけを積極的に勧めてくる場合は、その理由を確認しましょう。
4. 費用の内訳が書面で示されるか
着手金、実費、過払金報酬金。これらが個別に示され、支払い方法まで書面で確認できることが望ましい形です。日弁連の規程では、過払金報酬金について次の上限が定められています(消費税別)。
| 区分 | 上限 |
|---|---|
| 訴訟によらない場合 | 回収額の20%以下 |
| 訴訟による場合 | 回収額の25%以下 |
| 解決報酬金 | 1社あたり2万円以下が原則(商工ローンは5万円以下) |
| 減額報酬金 | 減額分の10%以下 |
着手金には上限規制が置かれていないため、総額でいくらかかるのかを確認することが大切です。
5. 訴訟に進む場合の方針を聞けるか
交渉のみで解決するか、訴訟まで行うかで、回収額も期間も変わります。どういう場合に訴訟を選ぶのか、その場合の費用と期間はどうなるのかを、あらかじめ聞いておきましょう。
6. 経過を報告してくれるか
同規程では、事件処理の経過を依頼者に報告することも定められています。連絡の頻度や方法、担当窓口を確認しておくと、進行中の不安が減ります。
相談で確認した内容や事務所からの報告は、日付とあわせてノートに書き留めておくと、複数の窓口を比べるときや後から見返すときに役立ちます。
7. 回収金の精算方法
返還された過払い金がいつ、どのように手元に入るのか。報酬や実費を差し引いた精算書が出るのか。この点を先に確認しておくと、後のトラブルを避けられます。
8. 有資格者であることの確認
弁護士は所属弁護士会と日本弁護士連合会に、司法書士は所属する司法書士会と日本司法書士会連合会に登録されています。日本弁護士連合会や各会のウェブサイトでは、登録されている専門家を確認できる仕組みが用意されています。司法書士に依頼する場合は、法務大臣の認定を受けた認定司法書士かどうかも確認しましょう。

こういう対応には立ち止まる
・取引履歴も見ていない段階で、戻る金額を断言する
・その場での契約を強く求め、考える時間を与えない
・費用の内訳を書面で示してもらえない
・担当する弁護士・司法書士と直接話ができない
・不利益になる点をまったく説明しない
・弁護士・司法書士でない者が手続きを持ちかけてくる
最後の点は法律上の問題を含みます。弁護士や認定司法書士でない者が報酬を得る目的で法律事務を扱うことは、弁護士法に反します。「過払い金を代わりに取り戻します」と持ちかけてくる無資格の相手には応じないでください。心当たりがあれば消費者ホットライン188、または警察に相談しましょう。
相談に行くときの準備
・借入先の社名(記憶している範囲で構いません)
・借り始めた時期と、最後に返済した時期
・契約書、利用明細、振込記録など残っている資料
・本人確認書類
・現在返済中の借入がある場合はその一覧
・法テラスを利用する場合は収入・資産が分かる資料
資料が手元になくても相談はできます。取引履歴は業者から取り寄せられるためです。社名があいまいな場合は、信用情報の本人開示が手がかりになることもあります。

よくある質問
Q. 過払い金に強い事務所はどう見分ければいいですか
A. 外から見える情報だけで実力を比較することは困難です。この記事で挙げた確認ポイントに、相談の場でどう答えるかを見るのが現実的です。複数の窓口で話を聞いて比べることをおすすめします。
Q. 広告をたくさん出している事務所は安心ですか
A. 広告の量と対応の質は別の話です。日弁連の規程には広告に関する規制も含まれています。広告の印象ではなく、説明の中身で判断してください。
Q. 口コミは参考になりますか
A. 過払い金の結果は取引内容によって大きく異なるため、他の方の金額はあまり参考になりません。連絡の頻度や説明の丁寧さといった、手続きの進み方が分かる記述は多少の参考になります。
Q. 費用が安い事務所を選べばいいですか
A. 金額だけでは判断できません。着手金が低くても報酬の割合が高い場合や、訴訟に進むと別途費用がかかる場合があります。総額と条件を書面で確認してください。
Q. 遠方の事務所でも依頼できますか
A. 電話やオンラインでの相談に対応している事務所は増えています。ただし、弁護士が受任する際は直接面談が原則とされているため、面談の方法は個別に確認してください。
Q. 相談したら依頼しなければいけませんか
A. そのようなことはありません。話を聞いたうえで見送る、他の窓口にも相談する、という判断は自由です。
Q. 家族に知られたくないのですが
A. 専門家には守秘義務があります。ただし業者からの郵便物が自宅に届くことがあるため、連絡方法の希望は相談の最初に伝えておきましょう。
まとめ
過払い金の相談先を選ぶときに大切なのは、どの事務所が優れているかを外から判断しようとすることではありません。公開されているルールを基準に、自分の目で確認していくことです。
直接面談があるか、不利益な点を説明してくれるか、費用の内訳が書面で出るか、訴訟の方針を聞けるか。これらは日弁連の規程に沿った項目であり、相談の場でそのまま確かめられます。
そして、費用の不安がある場合や、まず中立的に話を聞きたい場合は、法テラス、弁護士会・司法書士会、自治体の相談窓口という選択肢があります。1か所で結論を出さず、複数の窓口で比較したうえで決めてください。
過払い金が発生するかどうか、金額がいくらになるかは、事案ごとにまったく異なります。この記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。判断にあたっては弁護士・認定司法書士・法テラスにご相談ください。
・法テラス・サポートダイヤル 0570-078374(平日9時〜21時/土曜9時〜17時)
・消費者ホットライン 188(局番なし)
・お住まいの地域の弁護士会 法律相談センター
・お住まいの地域の司法書士会 相談センター
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