「過払い金が戻ってくるかもしれない」という広告を見て、自分は対象になるのだろうかと調べ始めた方も多いと思います。ただ、この分野は誤解が広まりやすく、実際より対象が広いように受け取られがちです。
先に結論を書きます。過払い金の対象になるのは、グレーゾーン金利が撤廃される前の時期に、高金利で借入をしていた方に限られます。しかも、最終取引日から10年という時効があり、請求先の業者が存続していることも前提になります。この3つがそろって、はじめて検討の対象に入ります。
この記事では、どんな条件を満たせば過払い金の対象になるのか、逆にどんな借入は対象外なのかを整理します。金額は取引内容によってまったく異なり、発生していないケースも多くあります。個別の判断は弁護士・認定司法書士・法テラスへの相談を通じて行ってください。

過払い金の対象になる3つの条件
1. グレーゾーン金利が撤廃される前に、その金利帯で借入をしていた
2. その業者との最終取引日から10年が経過していない
3. 請求先の貸金業者が存続している
順に見ていきます。
条件1:借入の時期と金利
かつて上限金利は2つあった
過去には、上限金利について2つの法律が異なる数字を定めていました。利息制限法は元本10万円未満で年20%、10万円以上100万円未満で年18%、100万円以上で年15%を上限としていました。これに対し、出資法の上限は年29.2%でした。
この2つの上限に挟まれた金利帯が「グレーゾーン金利」です。一定の要件を満たせば有効とみなされる扱いがあり、多くの貸金業者がこの範囲で貸付けを行っていました。
払いすぎた分が過払い金になる
利息制限法の上限を超える利息は、法律上は無効です。超過分を元本に充当し直して計算すると、借金が減ったり、完済後にさらに払いすぎた分が残ったりします。この残った分が過払い金です。
グレーゾーン金利はすでに撤廃されている
2010年6月18日の改正貸金業法の完全施行により、出資法の上限金利は年29.2%から年20%に引き下げられ、グレーゾーン金利は撤廃されました。これ以降に始まった借入は利息制限法の範囲内の金利であるため、過払い金は発生しません。
つまり、過払い金の対象になるかどうかは、実質的に「いつ借り始めたか」でほぼ決まります。撤廃前から長く取引を続けていた方ほど、過払い金が生じている可能性があります。
借り始めた時期を確かめる手がかりとして、当時の契約書や利用明細、業者からの郵便物が残っていれば、ひとつにまとめて保管しておくと相談の際に役立ちます。
対象になりやすい借入・なりにくい借入
| 借入の種類 | 対象になる可能性 |
|---|---|
| 消費者金融からの借入(グレーゾーン金利撤廃前) | 検討の余地がある |
| クレジットカードのキャッシング(同上) | 検討の余地がある |
| 信販会社からの借入(同上) | 検討の余地がある |
| グレーゾーン金利撤廃後の借入 | 対象外 |
| クレジットカードのショッピング利用 | 対象外 |
| 銀行のカードローン | 通常は対象外 |
| 住宅ローン・自動車ローン | 対象外 |
| 奨学金 | 対象外 |
クレジットカードについては、キャッシング枠での借入とショッピング枠での利用が区別される点に注意してください。ショッピング利用は立替払いであり、利息制限法の上限金利の適用対象とは扱いが異なります。
銀行のカードローンは、もともと利息制限法の範囲内の金利で提供されていたため、通常は過払い金が発生しません。

条件2:時効が完成していないこと
最終取引日から10年
過払い金の返還請求権には消滅時効があります。起算点は最終取引日で、そこから10年が経過すると請求できなくなるのが原則です。
最終取引日とは、その業者と最後に借入または返済をした日を指します。完済した日と一致するとは限らない点に注意が必要です。たとえば、完済したつもりでも端数の精算が後日行われていた場合などは、日付がずれることがあります。
時効は年々厳しくなっている
グレーゾーン金利が撤廃されてからすでに相当な年数が経過しています。そのため、対象になり得る取引の多くは、すでに最終取引日から10年を超えているか、超えつつあります。心当たりがある方は、確認だけでも早めに進めるほうが選択肢は残ります。
時効の主張がされて初めて確定する
厳密には、消滅時効は貸金業者が援用(主張)して初めて効力を生じます。10年を過ぎていれば一律に不可能というわけではありませんが、実務上は業者が時効を主張するのが通常です。過度な期待は禁物です。
条件3:請求先の業者が存続していること
過払い金は、その業者に対して返還を求める権利です。したがって、業者が存在しなければ回収できません。
グレーゾーン金利の撤廃と過払い金返還請求の増加により、経営が悪化した貸金業者は少なくありません。大手業者が会社更生手続に入った例では、過払い金の返還が元金の数パーセント程度にとどまりました。その後手続きが終了している業者については、請求そのものができないこともあります。
一方、社名変更や合併があった場合は、承継先に請求できることがあります。「あの会社はもうない」と自己判断せず、専門家に確認するのが確実です。
「借りたことがあれば戻ります」「平均◯◯万円戻っています」といった説明は、対象条件を無視した表現です。過払い金が発生するかどうか、いくらになるかは、借入の時期・金利・取引期間・返済額によってまったく異なります。取引履歴を確認する前に金額を断言できる人はいません。
自分が対象かどうかを確認する方法
取引履歴の開示を請求する
もっとも確実なのは、貸金業者に取引履歴の開示を求めることです。取引履歴には、いつ・いくら借りて・いくら返したかが記録されています。貸金業者には開示に応じる義務があるとされており、最高裁判所もこの義務を認める判断を示しています。
信用情報を開示してみる
どの業者と取引があったか自体があいまいな場合は、信用情報機関に本人開示を申し込む方法があります。ただし、信用情報の保有期間は限られており、CICのクレジット情報は契約期間中および契約終了後5年以内、JICCの契約内容・返済状況・取引事実は5年以内です。古い取引は信用情報からはすでに消えている可能性が高い点に留意してください。
手元の資料を探す
契約書、利用明細、返済の振込記録、業者からの郵便物。これらが残っていれば、業者名と取引時期の手がかりになります。ただし、資料がなくても取引履歴は業者から取り寄せられるため、必須ではありません。


判断が分かれるケース
取引が途中で途切れている
同じ業者と長期間取引していても、途中で完済して空白期間があり、その後また借り直している場合、前後の取引を一連のものと見るか、別の取引と見るかで結論が変わります。別の取引と判断されると、古い部分は時効にかかってしまいます。この点は個別の事情で判断が分かれる論点です。
取引の一連性や時効といった論点の基本を知っておくと、専門家から説明を受けるときにも内容を理解しやすくなります。
本人が亡くなっている
過払い金の返還請求権は相続の対象になります。亡くなった方に過払い金があった場合、相続人が請求できることがあります。ただし、時効の起算点は変わらないため、期間の確認は必要です。
すでに債務整理をしたことがある
過去に任意整理などで和解している場合、その和解の内容によっては、あらためて過払い金を請求できるかどうかが問題になります。和解書の内容を確認したうえでの判断になります。
家族名義で借りていた
契約者本人でなければ請求はできません。家族の借入について代わりに請求したい場合は、本人の委任や、相続が発生している場合の相続人としての立場が必要になります。
依頼するときに知っておきたいルール
日本弁護士連合会の「債務整理事件処理の規律を定める規程」では、過払金報酬金について、訴訟によらない場合は回収額の20%以下、訴訟による場合は回収額の25%以下という上限が定められています(消費税別)。
同規程では、過払い金返還請求のみを受任することを原則として禁止しています。他に返済中の借入がある場合は、その全体を含めて相談する形になります。
司法書士に依頼する場合は制限があります。最高裁判所は平成28年6月27日の判決で、債務整理の対象となる個別の債権の価額が140万円を超える場合、認定司法書士はその債権に関する裁判外の和解を代理できないと判断しました。過払い金が140万円を超える見込みなら、弁護士に依頼する必要があります。

よくある質問
Q. 何年前の借入まで対象になりますか
A. 借入の開始時期がグレーゾーン金利の撤廃前であることに加え、最終取引日から10年以内であることが必要です。借り始めが古くても、最後の取引から10年を過ぎていれば原則として難しくなります。
Q. 完済していないと請求できませんか
A. 返済中でも引き直し計算は可能です。ただし、計算の結果まだ借金が残る場合は債務整理として扱われ、信用情報に記録されます。完済済みの取引で過払い金が戻る場合とは扱いが異なります。
Q. 少額でも請求できますか
A. 金額の下限はありません。ただし、依頼する場合は報酬や実費との兼ね合いで、手元に残る額が小さくなることがあります。相談時に確認してください。
Q. 銀行から借りていた分は対象になりますか
A. 銀行のカードローンは通常、利息制限法の範囲内の金利で提供されていたため対象外です。ただし、銀行系の保証会社や関連する貸金業者からの借入は、時期と金利によって検討の余地があります。
Q. 対象かどうかを無料で調べられますか
A. 多くの法律事務所・司法書士事務所が初回の相談を無料としています。資力基準を満たす場合は、法テラスの無料法律相談も利用できます。まずは相談してみるのが早道です。
Q. 会社に知られますか
A. 完済した借入についての請求であれば、勤務先に知られることは通常ありません。業者からの郵便物が自宅に届く可能性はあるため、連絡方法について相談しておくとよいでしょう。
Q. いま返済中の借金があります。過払い金だけ請求できますか
A. 日弁連の規程では、過払い金返還請求のみを受任することは原則として禁止されています。返済中の借入がある場合は、全体の整理方針とあわせて相談することになります。
まとめ
過払い金の対象になるのは、グレーゾーン金利が撤廃される前にその金利帯で借入をしていて、最終取引日から10年が経過しておらず、請求先の業者が存続している場合です。この3つのいずれかが欠けると、請求は難しくなります。
広告の印象とは違い、対象となる方は年々限られてきています。それでも、条件に当てはまる可能性があるなら、確認しないまま時効を迎えるのはもったいない話です。まずは取引履歴の確認から始めてみてください。
効果や金額は事案ごとにまったく異なります。この記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。判断にあたっては弁護士・認定司法書士・法テラスにご相談ください。
・法テラス・サポートダイヤル 0570-078374(平日9時〜21時/土曜9時〜17時)
・消費者ホットライン 188(局番なし)
・お住まいの地域の弁護士会 法律相談センター
・お住まいの地域の司法書士会 相談センター
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