奨学金の返済が苦しくて「もう払えない」と追い詰められている方は少なくありません。収入が少ない、失業した、病気になったなど、理由は様々ですが、放置すれば延滞金が膨らみ、最悪の場合は給与差し押さえに至ります。
奨学金には返済額の減額や猶予など、返済が困難になった場合の救済制度が用意されています。これらを知らずに無理な返済を続けたり、放置したりしている方が非常に多いです。
この記事では、奨学金が返済できない場合の対処法を、公的な救済制度から債務整理まで段階的に解説します。

JASSO(日本学生支援機構)の救済制度
減額返還制度
毎月の返済額を一定期間減額してもらえる制度です。月々の返済額を2分の1、3分の1、4分の1、3分の2に減額することができます(2026年10月時点のJASSO公式サイトによる)。減額した分だけ返済期間は延びますが、返済総額は変わりません。
具体例として、月々の返済額が2万円の場合、2分の1に減額すれば月1万円、4分の1なら月5,000円にまで負担を軽減できます。収入が少ない時期を乗り越えるための制度なので、転職活動中や産休・育休中の方にも利用されています。
- 対象:経済的理由で返済が困難だが、減額すれば返済可能な方
- 期間:1回の申請で12ヶ月間、最長15年(180ヶ月)まで延長可能
- 条件:収入が一定基準以下であること(給与所得者は年間収入金額400万円以下が目安。本人が扶養している子どもが2人の場合は500万円以下、3人以上の場合は600万円以下。2026年10月時点)
制度を使うかどうかを考える際は、毎月の収入と支出を家計簿で把握しておくと判断しやすくなります。
返還期限猶予制度
返済を一定期間猶予(先延ばし)してもらえる制度です。猶予期間中は返済が完全にストップします。
- 対象:経済的に困窮し、減額返還でも返済が困難な方
- 期間:1回の申請で12ヶ月間、通算10年(120ヶ月)まで利用可能
- 条件:収入が一定基準以下、または失業・傷病などの理由があること
減額返還も返還期限猶予も「申請制」です。自動的に適用されることはないので、条件に該当する方は自分から申請する必要があります。
救済制度の申請方法
申請の流れ
- JASSOのスカラネット・パーソナルにアクセスする
- 必要書類を準備する(収入証明、失業証明など)
- 申請書を提出する(インターネットまたは郵送)
- 審査結果を待つ(1〜2ヶ月程度)
必要書類の例
- マイナンバーの提出
- 所得証明書または課税証明書
- 退職証明書(失業の場合)
- 医師の診断書(傷病の場合)
収入証明などの書類は申請や更新のたびに必要になるため、ファイルにまとめて保管しておくと便利です。
申請は返済が遅れる前に行うのが理想です。すでに延滞している場合でも申請は可能ですが、延滞金が発生している場合は先にそれを清算する必要があるケースがあります。

奨学金を放置した場合のリスク
延滞金が加算される
延滞すると年3%(第二種の場合)の延滞金が発生します。延滞期間が長くなるほど延滞金が膨らみ、返済がさらに困難になります。例えば、返済残高200万円で1年間延滞すると、6万円の延滞金が発生します。2年、3年と延滞が続けば、延滞金だけで十数万円に膨れ上がるケースもあります。
信用情報に事故情報が登録される
3ヶ月以上の延滞で信用情報機関に事故情報が登録されます。これにより、クレジットカードの作成やローンの契約が難しくなります。
一括返済を求められる
長期延滞が続くと、JASSOから残額の一括返済を求められます(期限の利益の喪失)。
給与や財産の差し押さえ
最終的には裁判所を通じた強制執行により、給与や預金口座が差し押さえられる可能性があります。
奨学金を「払えないから放置する」のが最も危険な選択です。放置すれば状況は確実に悪化します。払えない場合は、すぐにJASSOに連絡するか、弁護士に相談してください。
救済制度でも解決できない場合の最終手段
任意整理
JASSOとの交渉で将来利息のカットや返済条件の変更を行います。ただし、JASSOの奨学金は元々金利が低いため、任意整理の効果は限定的です。
個人再生
借金の額に応じて、最大で10分の1程度まで減額される場合がある手続きです(民事再生法231条の最低弁済額による。財産の額などによって変わります)。奨学金以外にも借金がある場合に有効です。
自己破産
すべての借金を免除してもらう最終手段です。奨学金の返済義務もゼロになります。ただし、保証人がいる場合は、保証人に請求が移るため注意が必要です。
保証人への影響
人的保証(連帯保証人・保証人)で奨学金を借りている場合、本人が債務整理をすると保証人に請求が移ります。保証人への影響を最小限に抑えるためには、事前に保証人と相談し、必要に応じて保証人も一緒に債務整理を検討することが大切です。一方、機関保証(日本国際教育支援協会が保証人になる制度)を利用している場合は、保証人となる個人がいないため、債務整理をしても親や親族に請求が行くことはありません。JASSOの「奨学金事業に関するデータ集」(令和8年1月)によると、令和6年度に機関保証を選択した学生は、その年度の採用者の56.09%です。

よくある質問
Q. 減額返還と返還期限猶予は同時に利用できますか?
同時には利用できません。まず減額返還を試し、それでも返済が困難な場合に返還期限猶予に切り替えるという流れが一般的です。なお、減額返還から返還期限猶予への切り替えは、現在の申請期間が終了するタイミングで行います。切り替え時にも改めて収入証明等の書類が必要になるため、早めに準備しておきましょう。
Q. 給付型奨学金にも返済義務はありますか?
給付型奨学金は返済不要です。返済義務があるのは「貸与型奨学金」(第一種:無利子、第二種:有利子)のみです。
Q. 奨学金の時効はありますか?
民法の債権の消滅時効(10年、改正民法では5年)が適用されますが、JASSOは定期的に請求を行うため、実質的に時効が成立するケースは稀です。
Q. 結婚相手に奨学金の返済義務はありますか?
ありません。奨学金の返済義務は借りた本人のみにあり、配偶者に返済義務が移ることはありません。ただし、家計全体で見れば返済負担は共有することになるため、結婚前に奨学金の残高や返済計画をパートナーと共有しておくことをおすすめします。
家計全体を見直すために、お金の基本を一冊で押さえておく方法もあります。
Q. 所得連動返還方式とは何ですか?
第一種奨学金で選択できる返還方式で、前年の所得に応じて毎月の返済額が変動します。収入が少ない場合は返済額も少なくなるため、返済の負担を軽減できます。
まとめ
奨学金が返済できない場合は、まずJASSOの減額返還制度や返還期限猶予制度を活用しましょう。これらの制度を利用すれば、毎月の返済負担を軽減したり、一時的に返済をストップしたりすることが可能です。
救済制度でも対応しきれない場合は、任意整理・個人再生・自己破産といった債務整理も選択肢に入ります。保証人への影響には十分注意が必要ですが、弁護士と相談して最適な方法を選べば、奨学金の問題は解決できる可能性が高いです。
最悪なのは放置することです。延滞を続ければ状況は悪化する一方です。返済が厳しいと感じたら、一日でも早くJASSOまたは弁護士に相談してください。




