複数の会社から借入があり、返済のために別の借入をしている。毎月の返済額が収入を圧迫していて、何から手を付ければいいのか分からない。そうした状態を多重債務といいます。
この状態で最も避けたいのは、ひとりで抱え込んで時間だけが過ぎることです。日本には、無料で相談できる公的・公益の窓口が複数用意されています。ところが「どこに相談すればいいのか分からない」という理由で、その窓口にたどり着けていない人が少なくありません。
この記事では、多重債務の相談窓口にどんな種類があるのか、それぞれ何ができるのか、どう使い分ければよいのかを整理します。相談すること自体には、費用も不利益もかからない窓口があるという点を、まず知ってください。

相談先には大きく2種類ある
1.公的・公益の相談窓口
国や自治体、公益法人が運営している窓口です。特定の事務所や商品を売り込む立場ではないため、中立的な立場から、現状の整理と適切な窓口の案内をしてくれます。まずどこに相談するか迷ったら、こちらから当たるのが基本です。
2.弁護士・認定司法書士
実際に債権者との交渉や裁判所の手続きを代理できるのは、弁護士と(一定の範囲で)認定司法書士です。手続きを実行する段階では、こうした専門家に依頼することになります。
金融庁も、多重債務についての相談窓口として、法テラス、日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会、日本貸金業協会、日本クレジットカウンセリング協会、全国銀行協会、警察、消費生活センター、国民生活センターを案内しています。
「公的窓口で現状を整理する」→「必要なら専門家に依頼する」という順序で考えると迷いにくくなります。いきなり広告で見つけた事務所に電話する前に、中立的な窓口で基準を作りましょう。
無料で相談できる主な窓口
代表的な窓口を整理します。連絡先・受付時間は記事執筆時点のものですので、利用前に各機関の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
| 窓口 | 連絡先 | 受付時間の目安 |
|---|---|---|
| 法テラス(日本司法支援センター) | 0570-078374 | 平日9時〜21時、土曜9時〜17時 |
| 日本クレジットカウンセリング協会 (多重債務ほっとライン) |
0570-031640 | 平日(受付時間は公式サイトでご確認ください) |
| 消費者ホットライン | 188 | 最寄りの消費生活センター等の受付時間による |
| 日本貸金業協会 (貸金業相談・紛争解決センター) |
0570-051-051 | 平日9時〜17時 |
| 全国銀行協会相談室 (カウンセリングサービス) |
番号は全国銀行協会の公式サイトでご確認ください | 平日(受付時間は公式サイトでご確認ください) |
| 警察相談専用電話 | #9110 | 違法な取立てや犯罪被害の相談 |
法テラス(日本司法支援センター)
法テラスは国が設立した法人で、法的トラブルの総合案内を担っています。情報提供や窓口の案内は、収入に関係なく利用できます。
さらに、収入と資産が定められた資力基準以下であれば、弁護士・司法書士による無料法律相談(民事法律扶助)を利用できます。同一の問題について3回まで利用できる運用です。また、実際に依頼する段階では、弁護士費用等を立て替えて後から分割で返す制度も用意されています。「費用が払えないから相談できない」と考えている方こそ、法テラスの制度を確認してみてください。
日本クレジットカウンセリング協会
公益財団法人が運営する窓口で、多重債務ほっとライン(0570-031640)で電話相談を受け付けています。電話相談やカウンセリングは無料で、希望に応じて無料で任意整理と家計管理の改善を支援していると案内されています。カウンセリングという名のとおり、家計の立て直しまで含めて相談できるのが特徴です。
家計の状況を相談するときは、毎月の収支を書き込んだ家計簿があると話が具体的になります。
消費者ホットライン(188)と消費生活センター
「188」に電話をかけると、身近な消費生活センター等につながります。借金そのものの手続きを代理する窓口ではありませんが、不当な取立てや不審な勧誘への対応、適切な窓口の案内を受けられます。
財務局・都道府県・市区町村の窓口
金融庁は、財務局および都道府県の多重債務相談窓口の一覧を公開しています。お住まいの地域の財務局や、市区町村の消費生活相談窓口でも、多重債務の相談を受け付けています。自治体によっては、弁護士による無料法律相談を定期開催しているところもありますので、広報誌や公式サイトを確認してみてください。
日本貸金業協会・全国銀行協会
日本貸金業協会は貸金業相談・紛争解決センター(0570-051-051/平日9時〜17時)を設けています。ナビダイヤルが利用できない場合の番号も案内されています。全国銀行協会相談室は、住宅ローンやカードローン等の返済に困っている個人向けにカウンセリングサービスを実施しており、相談料は無料と案内されています。連絡先は全国銀行協会の公式サイトでご確認ください。

弁護士・認定司法書士に相談する場合
どこで探すか
各地の弁護士会が運営する法律相談センターや、司法書士会の相談窓口では、借金に関する相談を受け付けています。無料枠の有無や実施日は地域によって異なるため、お住まいの地域の会に問い合わせてください。日本弁護士連合会・日本司法書士会連合会の公式サイトから、各地の会の情報をたどれます。
認定司法書士には代理権の上限がある
ここは相談先を選ぶうえで重要な知識です。司法書士のうち、法務大臣の認定を受けた認定司法書士は、簡易裁判所の訴訟代理関係業務を行うことができます。ただし、その範囲には上限があります。
最高裁判所は平成28年6月27日の判決で、認定司法書士が債務整理を受任した場合、個別の債権額が140万円を超えるときは、その債務について裁判外の和解の代理人になることはできないと判断しました。
注意してほしいのは、この140万円が「借金の総額」ではなく「1社あたりの債権額」を指しているという点です。たとえば5社から100万円ずつ借りている場合、総額は500万円ですが、1社あたりは140万円以下なので、認定司法書士が代理できる範囲に収まります。逆に、1社から200万円借りている場合、その債務については代理できません。
裁判所の手続きでの違い
個人再生や自己破産は、地方裁判所に申立てをする手続きです。認定司法書士は、これらの手続きについて代理人になることはできず、裁判所に提出する書類の作成が業務範囲となります。申立人本人が裁判所とやり取りする場面が出てくるということです。
| 手続き | 弁護士 | 認定司法書士 |
|---|---|---|
| 任意整理(裁判外の交渉) | 金額の制限なく代理可能 | 1社あたりの債権額140万円以下の範囲で代理可能 |
| 個人再生 | 代理人として申立て可能 | 書類作成が業務範囲(代理人にはなれない) |
| 自己破産 | 代理人として申立て可能 | 書類作成が業務範囲(代理人にはなれない) |
どちらに依頼するかは、債務の構成や希望する手続きによって変わります。1社あたりの残高がいくらなのかを整理しておくと、相談がスムーズに進みます。
実在と登録の確認
依頼を検討している事務所については、弁護士であれば日本弁護士連合会や各弁護士会の会員検索、司法書士であれば日本司法書士会連合会や各司法書士会の会員検索で、登録状況を確認できます。広告だけで判断せず、公的な名簿で実在と登録を確かめる習慣をつけてください。

相談前に準備しておくとよいもの
手ぶらで相談に行っても構いませんが、次のものがあると話が具体的になり、その場でもらえる助言の精度も上がります。
| 準備するもの | 内容 |
|---|---|
| 債権者の一覧 | 借入先の名称、残高、毎月の返済額、借入時期 |
| 明細・契約書 | カードの利用明細、ローンの契約書、督促状 |
| 収入の資料 | 給与明細、源泉徴収票、確定申告書の控え |
| 家計の状況 | 家賃、光熱費、通信費など毎月の固定支出 |
| 財産の状況 | 預貯金、不動産、自動車、保険の解約返戻金など |
残高が分からない場合は、信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に開示請求をすると、契約している会社と残高の概要を確認できます。記憶に頼らず、記録で確認するほうが、抜け漏れがなくなります。
明細や契約書、督促状などの書類は、1冊のファイルにまとめておくと相談の場に持参しやすくなります。
気をつけたい相談先
違法な業者の勧誘
多重債務の状態にある方を狙った勧誘があります。「審査なし」「ブラックでも融資可能」といった宣伝をする業者は、貸金業の登録を受けていない違法な業者である可能性があります。金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで、その業者が登録を受けているか確認してください。
「借金を整理します」とうたう非専門家
債務整理を業として行えるのは、弁護士と(範囲内で)認定司法書士に限られます。それ以外の者が報酬を得て債務整理を行うことは、法律上認められていません。「必ず減額できる」「借金がゼロになる」といった断定的な説明をする相手には注意してください。実際にどれだけ負担が変わるかは、債務の内容や収入によって異なり、事前に断定できるものではありません。
不当な取立てを受けている場合
大声での恫喝、勤務先への執拗な連絡、深夜早朝の訪問といった行為を受けている場合は、警察相談専用電話(#9110)や消費者ホットライン(188)に相談してください。緊急性が高い場合は110番です。
返済のために新たな借入を重ねることは、総額を増やす方向に働きます。「今月をしのぐための借入」が続いている場合は、その時点で相談のタイミングだと考えてください。

相談したあとの流れ
相談の結果、返済条件を見直す債務整理という選択肢が示されることがあります。任意整理、個人再生、自己破産といった方法がありますが、どの方法が使えるか、どの程度負担が変わるか、費用や期間がどうなるかは事案によって大きく異なります。収入、財産、債務の総額と内訳、家族の状況、住宅の有無などによって適した方法は変わりますし、いずれの手続きでも信用情報への影響があります。
この記事は一般的な情報の整理であり、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は、弁護士・認定司法書士・法テラスへの相談を通じて行ってください。
相談窓口の一覧は金融庁「多重債務についての相談窓口」にまとめられています。無料法律相談の資力基準や費用立替制度の詳細は法テラス、カウンセリングサービスの内容は日本クレジットカウンセリング協会の公式サイトで確認できます。
よくある質問
相談するとお金がかかりますか
この記事で挙げた公的・公益の窓口は、相談自体は無料です。弁護士・司法書士に依頼する段階では費用が発生しますが、法テラスの資力基準を満たせば無料法律相談や費用の立替制度を利用できる場合があります。
相談したら必ず債務整理をすることになりますか
そういうことはありません。家計の見直しや、返済計画の組み替えで対応できるケースもあります。相談は「選択肢を知るための場」であって、何かを決める場ではありません。
家族に知られずに相談できますか
電話相談であれば、その場で家族に伝わることはありません。ただし、手続きに進む段階では、書類の送付先や家計の資料の関係で説明が必要になることがあります。心配な点は相談時に伝えておくとよいでしょう。
どの窓口から連絡すればよいか分かりません
迷った場合は、法テラス(0570-078374)か消費者ホットライン(188)から始めるのが分かりやすい方法です。どちらも総合案内としての機能があり、状況に応じて適切な窓口を案内してくれます。
借入先を全部覚えていないのですが相談できますか
相談できます。信用情報機関への開示請求で契約状況を確認する方法があることも、窓口で案内してもらえます。分からないことがあるという前提で相談して問題ありません。
取立ての電話が怖くて出られません
弁護士や認定司法書士に依頼すると、受任通知が債権者に送られ、直接の取立てが止まる扱いになります。まずは相談し、依頼するかどうかを含めて方針を決めてください。不当な取立てを受けている場合は、警察相談専用電話(#9110)にも相談できます。
収入がなくても相談できますか
できます。むしろ収入がない状態は、法テラスの資力基準による支援の対象になりやすい状況です。まずは連絡してみてください。
まとめ
多重債務の相談窓口には、公的・公益の無料窓口と、実際に手続きを担う弁護士・認定司法書士の2種類があります。順序としては、まず中立的な公的窓口で現状を整理し、必要に応じて専門家に依頼するという流れが分かりやすいでしょう。
主な窓口は、法テラス(0570-078374)、日本クレジットカウンセリング協会の多重債務ほっとライン(0570-031640)、消費者ホットライン(188)、日本貸金業協会(0570-051-051)、全国銀行協会相談室などです。連絡先や受付時間は変更されることがあるため、利用前に各機関の公式サイトで確認してください。
専門家を選ぶ際は、認定司法書士の代理権が1社あたりの債権額140万円以下に限られること、個人再生・自己破産では代理人になれず書類作成が業務範囲であることを押さえておくと、判断しやすくなります。効果・費用・期間は事案によって異なりますので、具体的な方針は相談を通じて決めてください。



