債務整理を考えたとき、多くの方が最後まで踏み切れない理由が「保証人に迷惑をかけたくない」というものです。親に頼んで保証人になってもらった奨学金、義理で引き受けてもらった事業資金の保証。その相手に請求が行くと思うと、手続きに進めなくなるのは当然のことです。
結論から書きます。主債務者が債務整理をしても、保証人の債務は消えません。自己破産で主債務者が免責を受けた場合でも、債権者は保証人に請求できます。破産法は、免責の効力が保証人その他の第三者には及ばないことを定めているためです。この点を知らずに手続きを始めると、保証人との関係が壊れてしまいます。
とはいえ、迷惑をかけないための工夫がまったくないわけではありません。この記事では、手続きごとに保証人がどう影響を受けるのか、事前にできることは何かを整理します。具体的な進め方は事案によって変わるため、必ず弁護士・司法書士・法テラスにご相談ください。この記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。

大前提:保証債務は主債務者の手続きでは消えない
免責の効力は保証人に及ばない
保証債務は、主債務とは別個の債務です。主債務者が裁判所の免責許可決定を受けても、保証人が負っている債務はそのまま残り、債権者は保証人に対して全額を請求できます。これは制度の欠陥ではなく、保証という仕組みが本来「本人が払えなくなったときに備えるためのもの」だからです。
さらに、実務上の保証契約のほとんどは連帯保証です。連帯保証人には催告の抗弁権も検索の抗弁権もないため、「まず本人に請求してほしい」と言うこともできません。
請求は一括で来ることが多い
主債務者が返済を止めた時点で期限の利益が失われ、残額全部が一度に請求されるのが通常です。保証人は、分割で少しずつではなく残債の総額を一括で求められることになります。金額の大きさに驚いて慌てて振り込んでしまう方もいますが、支払う前に内訳と契約内容を確認してください。
届いた請求書や契約書の写しは、捨てずに1か所にまとめて保管しておくと、確認や相談の際に役立ちます。
主債務者が弁護士に依頼して受任通知が送られると、債権者は本人への直接請求を止めますが、その矛先が保証人へ向かうことになります。保証人が事情を知らないまま請求書を受け取ると、精神的な負担も人間関係へのダメージも大きくなります。

手続きごとの保証人への影響
任意整理:対象を選べる余地がある
任意整理は、裁判所を介さず債権者と個別に交渉する手続きです。したがってどの債権者を対象に含めるかを選べる点が特徴で、保証人がついている借入だけを対象から外し、そこは従来どおり返済を続けるという組み立てが検討できます。
ただし、外した分の返済を続けられるだけの収入が必要です。他の借入を整理しても家計が回らないのであれば、この方法は成り立ちません。また、債権者が交渉に応じるかどうかは相手次第で、必ず希望どおりの条件になるとは限りません。
返済を続けられるかどうかを見極めるには、まず毎月の収入と支出を書き出して把握しておくと、専門家との相談もスムーズになります。
個人再生:保証人は圧縮前の金額を請求される
個人再生は裁判所を通じた手続きで、原則としてすべての債権者を対象にします。本人の返済額が法律の定めに従って圧縮されても、保証人は圧縮される前の残額について請求を受けます。本人の負担が軽くなった分が、そのまま保証人に移る形になるとイメージしてください。
自己破産:保証人の債務はそのまま残る
自己破産も全債権者が対象です。免責が認められれば本人の支払義務はなくなりますが、保証人の債務は残ります。保証人が支払えなければ、保証人自身も債務整理を検討せざるを得ない状況になることがあります。

保証人に迷惑をかけないためにできること
1. 手続きの前に必ず保証人へ伝える
いちばん大切なのはこれです。請求書が届いてから初めて知る、という事態は避けてください。事前に事情を説明し、可能であれば一緒に相談に行くことで、保証人側も準備ができます。関係を壊さずに済むかどうかは、この一手で大きく変わります。
2. 保証人の分も含めて一緒に相談する
同じ弁護士・司法書士が主債務者と保証人の双方から相談を受けられるかは、利益相反の観点から事務所ごとに判断が分かれます。まずは事情を伝え、どういう体制で進められるかを確認してください。全体像を見たうえで方針を決められれば、無駄な動きを減らせます。
3. 任意整理で対象から外せないか検討する
前述のとおり、任意整理であれば保証人付きの債権を対象から外す組み立てを検討できます。実現できるかどうかは家計の状況次第ですが、選択肢として必ず検討する価値があります。
4. 保証人が代わりに払える範囲を先に確認する
保証人に一括請求が行った場合、その方が支払えるのか、分割交渉が必要なのかで対応が変わります。先に見通しを共有しておけば、突然の一括請求に慌てずに済みます。
・どの借入に誰が保証人としてついているか
・その借入の残額と、遅延損害金を含めた見込み額
・保証人本人の収入・資産の状況
・保証人自身に他の借入があるかどうか

保証人自身が債務整理をする場合
保証債務も整理の対象になる
保証人が請求を受けて払えない場合、その保証債務を自分の債務として整理することができます。任意整理で分割条件を組み直す、個人再生で圧縮を図る、自己破産で免責を求める、といった手続きが選択肢になります。
どの手続きも「必ず減額できる」と言えるものではありません。効果・期間・費用は事案によって異なり、財産の扱いや信用情報への影響も手続きごとに違います。判断は必ず専門家と一緒に行ってください。
求償権はあてにしにくい
保証人が代わりに返済すれば、その分を主債務者に請求する求償権が発生します。しかし主債務者が自己破産して免責を受けていれば、求償権も免責の対象となり、実際に回収することは困難です。「あとで本人からもらえばいい」という前提で無理な支払いをするのは避けてください。
信用情報への影響
保証債務であっても、返済が滞れば信用情報機関に事故情報として登録される場合があります。登録されると、新規の借入やクレジットカードの利用、住宅ローンの審査などに影響が出ます。保証人にとっては予期しない影響なので、この点も事前に共有しておきたいところです。

保証人がついていることが多い借入
自分の借入に保証人がついているかどうか、意識していない方も少なくありません。債務整理を検討する前に、次のような契約を確認してみてください。
奨学金
人的保証を選んでいる場合、親や親族が連帯保証人・保証人になっています。返済が難しくなったときは、いきなり整理を考える前に、貸与元が用意している返還期限の猶予や減額返還といった制度が使えないかを確認してください。制度の利用で乗り切れるなら、保証人に影響を及ぼさずに済みます。機関保証を選んでいる場合は、個人の保証人はついていません。
住宅ローン
配偶者が連帯保証人や連帯債務者になっているケースが多く見られます。ペアローンの場合はお互いが相手の保証人になっていることもあります。住宅を残したいのか手放すのかで取りうる手続きが変わるため、早い段階で方針を決める必要があります。
事業資金の借入
経営者本人のほか、家族や知人が個人保証をしている場合があります。事業のための貸金等債務について個人が保証人となる契約では、契約締結日の前1か月以内に公証人が保証意思を確認した公正証書が必要とされる仕組みがあり、これを欠く契約は効力が問題になり得ます。該当しそうなら弁護士に確認してください。
自動車ローン・賃貸借契約
自動車ローンでは親族が保証人になっていることがあり、賃貸住宅の契約では個人の保証人が立てられている場合があります。賃貸の保証は根保証にあたり、個人が保証人になる場合は極度額の定めがなければ効力を生じません。契約書の記載を一度確認しておくとよいでしょう。
1. 手元の契約書・借用証書をすべて集める
2. 「連帯保証人」「保証人」の欄に誰の名前があるか確認する
3. 書面が見つからない場合は、債権者に写しの交付を求める
4. 保証人つきの契約は、残額と遅延損害金の見込みを債権者に確認する
集めた契約書や返済予定表は、借入先ごとに分けて保管しておくと、相談の際にすぐ取り出せます。
相談先
・法テラス・サポートダイヤル 0570-078374(平日9時〜21時/土曜9時〜17時)
・消費者ホットライン 188(局番なし)
・お住まいの地域の弁護士会 法律相談センター
・お住まいの地域の司法書士会 相談センター
・日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター
法テラスは、収入や資産が一定の基準を下回る場合に、無料の法律相談や弁護士・司法書士費用の立替制度を利用できる公的な窓口です。主債務者と保証人のどちらの立場でも相談できます。
よくある質問
Q. 自己破産すれば保証人への請求もなくなりますか
A. なくなりません。免責の効力は保証人には及ばないため、債権者は保証人に対して請求を続けられます。手続きの前に保証人へ事情を伝えることを強くおすすめします。
Q. 保証人付きの借入だけ避けて債務整理はできますか
A. 任意整理であれば、対象とする債権者を選ぶ余地があります。ただし対象から外した分の返済を続けられる収入が必要です。個人再生と自己破産は原則としてすべての債権者が対象になるため、この方法は取れません。
Q. 保証人に一括請求が来ました。分割にしてもらえますか
A. 債権者との交渉次第で、分割に応じてもらえる場合があります。ただし条件は相手の判断によります。弁護士・司法書士を通じた方が交渉を整理しやすくなります。
Q. 保証人が支払ったお金は、あとで本人に請求できますか
A. 求償権として請求できますが、主債務者が免責を受けていれば求償権も免責の対象になります。資力がなければ回収は現実的ではありません。
Q. 保証人になった覚えがないのに請求が来ました
A. 契約書の写しの交付を求めてください。署名や押印が本人のものでない場合、保証契約の効力が争える可能性があります。支払う前に必ず専門家に相談してください。
Q. 奨学金の保証人になっている親に迷惑がかかりますか
A. 人的保証を選んでいる場合、本人が返済できなければ保証人に請求が行きます。返済が難しくなった段階で、まずは貸与元が用意している返還の猶予や減額の制度を確認してください。制度の利用で解決できることもあります。
Q. 相談のときに何を持って行けばよいですか
A. 借入先の一覧、契約書、返済予定表、督促状、給与明細、預貯金の状況がわかるものがあると話が早く進みます。保証契約の書面があれば必ず持参してください。
まとめ
この記事でいちばんお伝えしたいのは、主債務者が自己破産して免責を受けても、保証人には請求が行くという一点です。個人再生でも、保証人は圧縮前の残額について請求を受けます。裁判所を使う手続きは全債権者が対象になるため、保証人付きの借入だけを避けることは基本的にできません。
だからこそ、手続きを始める前に保証人へ伝えること、そして任意整理で対象から外す余地がないかを検討することが重要になります。順番を間違えると、金銭以上に大切なものを失いかねません。
この記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。効果・期間・費用は事案によって異なります。実際の判断にあたっては、弁護士・司法書士・法テラスにご相談ください。
関連記事:債務整理の無料相談はどこがいい?公的窓口と専門家の選び方をまとめて解説
関連記事:債務整理の弁護士費用の相場は?手続き別の内訳と日弁連の規程をわかりやすく解説
関連記事:債務整理は司法書士と弁護士どっちに依頼する?代理権の違いと選び方を解説
参考:法務省 – 保証に関する民法のルールが大きく変わります



