債務整理を終えた方から、いちばん多く寄せられる相談のひとつが住宅ローンの話です。「何年待てばマイホームを買えますか」という質問には、残念ながら一言で答えられません。
理由は二つあります。ひとつは、手続きの種類によって、参照される信用情報機関も登録される情報も違うこと。もうひとつは、信用情報から記録が消えることと、住宅ローンの審査に通ることは、まったく別の問題であることです。
この記事では、任意整理・個人再生・自己破産のそれぞれについて、信用情報がいつまで残るのかを各機関の公表情報にもとづいて整理し、そのうえで審査で実際に見られている要素を説明します。効果や期間、費用は事案によって異なり、ここに書いているのは一般的な情報です。個別の判断は弁護士・認定司法書士・法テラスへご相談ください。

住宅ローンの審査で見られる信用情報
銀行が照会するのはKSCが中心
住宅ローンを扱うのは銀行・信用金庫・信用組合が中心です。これらの金融機関が加盟しているのが、全国銀行協会が設置・運営するKSC(全国銀行個人信用情報センター)です。多くの金融機関はKSCに加えて、CICやJICCにも加盟しています。
また、フラット35を提供する住宅金融支援機構も個人信用情報機関を利用しており、申込みの際には申込者の信用情報が照会されます。「フラット35なら信用情報は見られない」というのは誤りです。どの機関に照会されるかは、申込時に交付される個人情報の取扱いに関する同意書に記載されていますので、そこで確認してください。
3つの機関で保有期間が異なる
債務整理に関する情報は、機関ごとに登録の枠組みも期間も違います。「5年経てば消える」と一括りにすると、住宅ローンでは判断を誤ります。
| 機関 | 主な加盟先 | 公表されている保有期間 |
|---|---|---|
| CIC | クレジットカード会社・信販会社・携帯電話会社など | クレジット情報は契約期間中および契約終了後5年以内/申込情報は照会日より6か月間 |
| JICC | 消費者金融・信販会社など | 契約日が2019年10月1日以降の契約は、契約内容に関する情報・取引事実に関する情報とも契約継続中および契約終了後5年以内/契約日が2019年9月30日以前の契約は、契約内容に関する情報が契約継続中および完済日から5年を超えない期間、取引事実に関する情報が発生日から5年を超えない期間 |
| KSC | 銀行・信用金庫・信用組合など | 取引情報は契約期間中および契約終了日から5年を超えない期間/官報情報は当該決定日から7年を超えない期間 |
官報情報という別枠
KSCの特徴は、破産手続開始決定や民事再生手続開始決定に関する官報の情報を独自に収集している点です。この官報情報の登録期間は当該決定日から7年を超えない期間とされています。以前は10年でしたが、2022年11月4日の運用変更で7年に短縮されました。
つまり自己破産や個人再生をした場合、取引情報が5年で整理されても、KSCの官報情報は決定日から最長7年残る可能性があるということです。銀行の住宅ローンを考えるうえでは、ここが実質的な区切りになります。

手続きの種類別に見た目安
任意整理の場合
任意整理は裁判所を通さない私的な交渉なので、官報には掲載されません。信用情報については、債務整理を行った事実や、その前提にある延滞の情報が登録されます。
注意したいのは起算点です。任意整理では和解にもとづいて3〜5年かけて返済していくのが一般的で、登録が消えるまでの期間は、和解時点ではなく完済時点から数えられる運用が多いとされています。返済に5年かけた場合、その後さらに5年という計算になり得ます。起算点の扱いは機関や債権者によって異なるため、担当の専門家に確認するのが確実です。
和解の内容や完済の時期がわかる書類は、ひとつにまとめて保管しておくと、後から起算点を確かめる際に役立ちます。
個人再生の場合
個人再生は裁判所の手続きであり、手続開始決定などが官報に掲載されます。そのためKSCの官報情報の対象になり、当該決定日から7年を超えない期間の登録となります。CICやJICCにも取引に関する情報として登録されるため、複数の枠組みが並行して動くことになります。JICCの場合、契約日が2019年10月1日以降か2019年9月30日以前かで起算の考え方が変わる点にも注意が必要です。
なお、住宅ローンを返済中に個人再生を行う場合には、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を使ってマイホームを残す道があります。これから新しく組む話とは別の論点ですが、現在返済中の方は選択肢として知っておいてください。
自己破産の場合
自己破産も官報に掲載されるため、KSCの官報情報の対象です。当該決定日から7年を超えない期間となります。CICやJICCの登録は5年以内が目安ですが、銀行の住宅ローンでは官報情報の期間まで影響が続く可能性があると考えておくのが現実的です。
・任意整理 … 官報に載らない。CIC・JICCの登録が中心で、完済からの起算になりやすい
・個人再生/自己破産 … 官報に載る。KSCの官報情報は決定日から7年を超えない期間
・いずれも「期間が明ければ組める」という保証にはならない

記録が消えても審査は別問題
信用情報は材料のひとつにすぎない
住宅ローンの審査では、信用情報のほかに年収・勤続年数・雇用形態・返済負担率・自己資金の額・物件の担保価値・健康状態(団体信用生命保険の加入可否)などが総合的に見られます。記録が消えることは審査のスタートラインに戻ることであって、通過が約束されるものではありません。
逆に言えば、記録が消えるまでの期間は、条件を整えるための準備期間として使えます。勤続年数を重ね、頭金を貯め、他の借入れを整理しておく。この積み重ねが、期間が明けたあとの結果を左右します。
頭金を貯めていくためには、毎月の収入と支出を把握し、貯蓄に回せる額を確認しておくことが役立ちます。
整理した相手の銀行・グループは慎重になりやすい
もうひとつ重要なのが社内情報です。債務整理の対象にした金融機関やそのグループ会社は、自社の顧客データとして取引の経緯を長期間保持していることがあります。信用情報機関の保有期間とは無関係に残るもので、俗に社内ブラックと呼ばれます。
そのため、かつて整理した相手の銀行では、期間が明けたあとでも審査が通りにくい場合があります。銀行・信販・カード会社が同じグループに属していることも多いため、申込先を検討するときは資本関係まで確認しておくと無駄が減ります。
配偶者名義やペアローンで考えるとき
本人の信用情報に不安がある場合、配偶者の単独名義で組むという選択肢を検討する方がいます。この場合に審査されるのは名義人本人の信用情報と収入です。ただし、収入合算やペアローン、連帯保証人として関与する形になると、その方の信用情報も審査対象になります。名義を分けたつもりでも関与の形によっては審査に影響するため、金融機関に確認しながら進めてください。

動き出す前にやっておきたいこと
開示請求で今の状態を確認する
いつ登録され、いつ消えるのかは契約ごとに起算点が違います。推測で待つより、CIC・JICC・KSCへ開示請求をして、実際の登録内容を確認するほうが確実です。いずれもインターネットや郵送での開示に対応しており、手数料がかかります。
本人が開示請求をした記録が、金融機関の審査に使われることはありません。開示によって不利になる心配はしなくて大丈夫です。
短期間に何社も申し込まない
住宅ローンの事前審査を同時に何社も出す方がいますが、申込情報はCICで照会日より6か月間、JICCでも照会日から6か月以内登録されます。短期間に申込みが集中していると、その履歴自体が慎重な判断を招く場合があります。開示請求で自分の状態を把握したうえで、対象を絞って申し込むのが得策です。
返済実績を積み直す
記録が消えた直後は、信用情報に履歴がほとんど無い状態になります。年齢のわりに取引履歴が無いことが、かえって判断を難しくする場合もあります。携帯端末の分割払いや、少額の割賦を期日どおりに支払う実績を重ねておくと、履歴として残ります。無理に借りる必要はありませんが、日常の支払いを一度も遅らせないことは、それ自体が積み上げになります。
返済中の住宅ローンが苦しいなら別の相談を
これから組む話ではなく、すでにある住宅ローンの返済が苦しいという段階なら、対応は変わります。金融機関への返済条件の変更(リスケジュール)の相談、個人再生の住宅資金特別条項、任意売却など、状況に応じた選択肢があります。競売まで進んでしまうと選べる手段が減るため、滞納が始まる前後の早い段階で相談してください。

よくある質問
Q. 債務整理から5年経てば住宅ローンは組めますか
A. 組めると断定することはできません。CICやJICCの登録が5年以内でも、個人再生や自己破産ではKSCの官報情報が決定日から7年を超えない期間残ります。さらに信用情報が消えたあとも、収入や勤続年数など通常の審査基準で判断されます。
Q. 任意整理は完済から数えるのですか、和解から数えるのですか
A. 完済時点から数えられる運用が多いとされていますが、機関や債権者によって扱いが異なります。ご自身のケースについては、手続きを担当した弁護士・認定司法書士に確認するか、開示請求で登録内容を直接確かめてください。
Q. フラット35なら審査は緩いのですか
A. 緩いという表現は適切ではありません。フラット35は物件の技術基準や担保価値を重視する設計になっていますが、申込みにあたっては申込者の信用情報も個人信用情報機関に照会されます。「信用情報を見られない住宅ローン」ではない、と理解しておいてください。
Q. 官報に載ったことは金融機関以外に知られますか
A. 官報は一般に公開されていますが、日常的に閲覧している方はほとんどいません。現実に注意したいのは、官報情報をもとに勧誘を行う業者からの連絡です。心当たりのない金融業者からの案内には応じないでください。
Q. 頭金を多く用意すれば審査に影響しますか
A. 借入額が小さくなり返済負担率が下がるため、審査の材料としては有利に働きます。ただし信用情報の記録を打ち消すものではありません。頭金だけで結果が決まるわけではない点は理解しておいてください。
Q. 住宅ローンの審査に落ちた理由は教えてもらえますか
A. 金融機関は否決の理由を申込者に説明しないのが通例です。信用情報が原因なのか、収入や物件の要素なのかは分かりません。だからこそ、事前に開示請求で自分の状態を把握しておく意味があります。
まとめ
債務整理後の住宅ローンは、まず信用情報の期間を正しく把握することから始まります。CICとJICCの登録は5年以内が目安、個人再生・自己破産ではKSCの官報情報が決定日から7年を超えない期間という違いを押さえてください。
そのうえで、記録が消えることと審査に通ることは別だということも忘れずに。整理した先の銀行やそのグループでは、社内の記録が長く残っている場合もあります。待つ期間を準備期間に変えて、頭金と安定した収入という土台を整えていきましょう。
効果や期間、費用は事案によって異なります。この記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。ご自身の状況に合った判断は、弁護士・認定司法書士・法テラスへの相談を通じて行ってください。
・法テラス・サポートダイヤル 0570-078374(平日9時〜21時/土曜9時〜17時)
・消費者ホットライン 188(局番なし)
・日本クレジットカウンセリング協会 0570-031640
・お住まいの地域の弁護士会 法律相談センター/司法書士会 相談センター
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