「債務整理をしたらスマホが持てなくなる」という不安を抱えている方は少なくありません。仕事の連絡も、家族との連絡も、行政の手続きも、いまはスマートフォンが前提になっています。そこが断たれると考えると、手続きに踏み切れなくなるのも無理はありません。
ですが、ここには整理すべき論点が二つあります。通話やデータ通信の契約そのものと、端末を分割払いで買う契約は、まったく別の契約です。前者は原則として信用情報の照会を伴わず、後者は割賦販売法にもとづく個別クレジットとしてCICの情報が参照されます。この違いを知らないまま「携帯が持てない」と思い込んでいる方が、とても多いのです。
この記事では、二つの契約の違いと、それぞれで何が起きるのかを整理し、端末をどう用意するかという実務まで説明します。審査基準は各社が公表していないため、結果を保証するものではありません。ここに書いているのは一般的な情報であり、個別の法的助言ではありません。

二つの契約を分けて考える
通話・データ通信の契約
回線の契約は、毎月の利用料を後払いで支払う継続的なサービスの契約です。この契約単体では、信用情報機関への照会は原則として行われません。債務整理の記録があること自体を理由に、回線を契約できなくなるわけではないということです。
ただし後述するとおり、過去に携帯料金を未払いのまま契約が終了している場合には、通信事業者どうしで共有される別の情報が関わってきます。
端末の分割払い
スマートフォン本体を分割で買う契約は、割賦販売法にもとづく個別信用購入あっせん契約にあたります。この契約では、割賦販売法にもとづく指定信用情報機関であるCICの情報が照会されます。事業者は申込者の支払可能見込額を調査することが法律上求められており、その過程で信用情報が使われます。
したがって、債務整理の記録がCICに登録されている間は、端末の分割払いの審査は通りにくくなります。ここが「携帯が持てない」と言われる部分の実態です。
携帯会社との契約書類や毎月の請求明細は、1冊のファイルにまとめておくと、分割代金の残りや支払状況を確認するときに役立ちます。
| 契約の種類 | 法的な性質 | 信用情報の照会 |
|---|---|---|
| 通話・データ通信の契約 | 継続的な役務の提供契約 | 原則として行われない |
| 端末の分割払い | 個別信用購入あっせん(割賦販売法) | CICの情報が照会される |
| 端末の一括購入 | 通常の売買 | 行われない |
CICに残る期間
CICのクレジット情報は、契約期間中および契約終了後5年以内の保有とされています。申込情報は照会日より6か月間です。JICCでは、債務整理などの取引事実に関する情報が発生日から5年以内。自己破産や個人再生をした場合、KSCの官報情報は当該決定日から7年を超えない期間となります。端末の分割払いで関わるのは主にCICですが、機関ごとに期間が違う点は押さえておいてください。

もうひとつの落とし穴、不払者情報
通信事業者どうしで共有されている情報
信用情報機関とは別に、携帯電話事業者の間で共有されている情報があります。電気通信事業者協会(TCA)が運営する不払者情報の交換という仕組みで、契約が終了したあとも料金が未払いのまま残っている方の情報を各社で交換し、新規契約の審査に使うものです。
交換される情報には氏名・生年月日・住所・契約終了前の連絡先や、料金の不払いの状況が含まれます。この情報が残っている間は、他社に乗り換えても新規の回線契約が難しくなります。一般に、契約終了から5年が経過すると削除される運用とされています。
この情報交換に参加しているのは、大手3キャリアだけではありません。TCAが公表している参加事業者の一覧には、一般社団法人テレコムサービス協会の会員として、MVNO(いわゆる格安SIM)を提供する事業者も多数含まれています。「大手が駄目なら格安SIMへ」という発想が通じない場合があるのは、このためです。自分が申し込もうとしている事業者が対象に含まれるかどうかは、TCAの一覧で確認できます。
携帯料金を債務整理の対象にすると何が起きるか
ここが実務上いちばん重要な判断ポイントです。携帯料金と端末の分割代金をまとめて請求されている場合、これらを債務整理の対象に含めると、回線が利用停止になり、未払いのまま契約が終了する扱いになる可能性があります。そうなると不払者情報の対象となり、他社での新規契約にも影響します。
スマートフォンを使い続けたい場合は、携帯料金と端末の分割代金を債務整理の対象から外すという判断があり得ます。対象にする債権を選べるのは任意整理の特徴で、自己破産や個人再生では原則としてすべての債権者を対象にしなければなりません。どの手続きを選ぶかによって扱いが変わるため、通信手段を確保したい意向は、最初の相談時に必ず伝えてください。

手続きの種類による違い
任意整理
任意整理は、対象にする債権者を選べるのが特徴です。携帯電話会社を対象から外し、料金と端末代の支払いを続けることで、回線も端末もそのまま使い続けられる可能性があります。裁判所を通さないため官報にも掲載されません。通信手段を守りたい方にとっては、この選択の自由が大きな意味を持ちます。
個人再生
個人再生では、原則としてすべての債権者を平等に扱う必要があります。端末の分割代金が残っている場合、その債権者も対象に含まれるのが原則です。手続開始決定は官報に掲載され、KSCの官報情報として当該決定日から7年を超えない期間登録されます。
自己破産
自己破産も、すべての債権者を対象にするのが原則です。端末の分割代金が残っていれば、その支払いも止まることになります。ただし、端末の分割払いが完済済みで、毎月の通信料だけを支払っている状態であれば、その料金を滞りなく払い続けている限り、回線がすぐに止まるわけではありません。
どの手続きを選ぶかで携帯の扱いが変わるため、通信手段の確保を優先したいという希望は、方針を決める前に伝えることが大切です。手続きが進んでから相談しても、選び直しがきかない場面があります。
端末をどう用意するか
一括で購入する
もっとも確実な方法です。端末を現金やデビットカードで一括購入すれば、割賦販売法の契約にあたらないため、信用情報は関係ありません。最新の機種にこだわらなければ、価格を抑えた端末は多く流通しています。
デビットカードを使う場合は、ほかのカードと分けて持ち歩けるカードケースがあると、残高の範囲での管理がしやすくなります。
中古端末を使う
中古端末を購入してSIMだけ契約する方法もあります。購入時には、ネットワーク利用制限の状態(前の所有者の分割払いが残っていないか)を必ず確認してください。利用制限がかかると通信ができなくなるため、販売店が制限の状況を明示しているかどうかが選ぶ基準になります。
手持ちの端末をそのまま使う
いま使っている端末の分割払いが完済しているなら、その端末を持ち込んでSIMだけ契約できます。SIMロックの状態と、契約したい事業者の周波数帯に対応しているかを確認しておいてください。
料金プランを見直す
債務整理の前後は家計を組み直す時期でもあります。通信料はいわゆる固定費で、見直しの効果が毎月続きます。使用量に合ったプランへ変えるだけで、負担が軽くなることは珍しくありません。プラン内容や料金は変更されることがあるため、詳細は各事業者の公式案内で最新の内容を確認してください。
通信費を含む固定費を見直すときは、毎月の支出を家計簿に書き出して比べると、どこを削れるかが見えやすくなります。

よくある質問
Q. 債務整理をしたら今のスマホはすぐ使えなくなりますか
A. 携帯料金と端末代を債務整理の対象に含めた場合は、利用停止になる可能性があります。対象から外して支払いを続ける場合は、そのまま使えるのが一般的です。どちらにするかは手続きの種類と事案によって変わるため、担当の専門家に確認してください。
Q. 家族名義で契約してもらうことはできますか
A. 家族が契約者となり、料金も家族が負担するのであれば問題ありません。ただし、契約者と実際の利用者・支払者が食い違う形は、契約上のトラブルにつながる可能性があります。家族に相談したうえで、正しい形で契約してください。
Q. プリペイド式の携帯という選択肢はありますか
A. あらかじめ料金を支払って使う方式のサービスもあります。取り扱う事業者や提供条件は変わることがあるため、公式案内で確認してください。
Q. 未払いの携帯料金がある場合はどうすればよいですか
A. まずは事業者へ連絡し、支払方法を相談してください。放置して契約が終了すると不払者情報の対象となり、他社での新規契約にも影響が及びます。支払いが難しい状況なら、その点も含めて弁護士・認定司法書士へ相談してください。
Q. 端末の分割払いを完済すれば記録は消えますか
A. CICのクレジット情報は契約期間中および契約終了後5年以内の保有とされています。完済した瞬間に消えるのではなく、そこから一定期間残る仕組みです。正確な状況は開示請求で確認できます。
Q. 自分の信用情報は自分で確認できますか
A. できます。CIC・JICC・KSCはいずれも本人開示に対応しており、インターネットや郵送で請求できます。手数料がかかります。本人が開示した記録が審査に使われることはありません。
Q. 子どもの携帯を新しく契約することはできますか
A. 未成年の契約には親権者の同意や名義が必要になるのが一般的です。親権者が契約者となる場合、端末を分割払いにすればその方の信用情報が照会されます。端末を一括で用意すれば、この論点は避けられます。
Q. 回線の契約にも審査はあるのですか
A. 本人確認や、過去の未払いの有無といった確認は行われます。ただし、これは信用情報機関への照会とは別のものです。氏名や住所を確認できる書類、支払いに使う口座やカードの情報を用意しておけば、通常は手続きが進みます。
Q. 支払方法を口座振替に変えることはできますか
A. 多くの事業者が口座振替に対応しています。クレジットカードが使えなくなった場合は、早めに支払方法の変更手続きを行ってください。変更が間に合わず引き落としに失敗すると、それが未払いとして扱われる恐れがあります。
Q. 光回線やインターネット契約にも同じ話があてはまりますか
A. 基本の考え方は同じです。回線の契約と、工事費や機器代を分割で支払う契約は別のものとして扱われます。分割払いを伴う契約では信用情報が参照される場合があるため、申込前に支払方法を確認してください。

まとめ
債務整理をしても携帯電話が持てなくなるわけではありません。回線の契約そのものは原則として信用情報の照会を伴わず、影響を受けるのは端末を分割払いで買う契約のほうです。端末を一括購入するか、中古端末を使うか、手持ちの端末を持ち込めば、この論点は避けられます。
一方で、携帯料金を未払いのまま契約が終了すると、電気通信事業者協会の不払者情報の対象となり、他社での新規契約にも影響が及びます。スマートフォンを使い続けたいのであれば、その意向を最初の相談時に伝えて、対象にする債権の選び方から検討してもらってください。
効果や期間、費用は事案によって異なります。この記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。判断に迷うときは弁護士・認定司法書士・法テラスへご相談ください。
・法テラス・サポートダイヤル 0570-078374(平日9時〜21時/土曜9時〜17時)
・消費者ホットライン 188(局番なし)
・日本クレジットカウンセリング協会 0570-031640
・お住まいの地域の弁護士会 法律相談センター/司法書士会 相談センター
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